11話 ページ20
「本当は、まだ本調子じゃないんだろう?
何故、嘘を吐く。」
降谷は、鋭い視線をAに向けた。
明らかに大丈夫ではない癖に、悪気もなく大丈夫と言い切ったAに怒りを覚えた。
けれど、降谷はそれ以上に悲しかった。
「貴方には、関係ないです。」
Aも、負けじと降谷と対峙した。
初めて向けられたAからの反抗に、彼女も負の感情をここまで剥き出しにする事があるのかと、降谷は思わず目を瞬かせる。
けれど降谷とて、ここで引くわけにはいかない。
「関係ない、か…。
確かにそうだな。」
「だったら…」
「けれど」
「惚れた女の心配をして何が悪い。」
今度は、Aが目を瞬かせた。
「よくよく考えれば当たり前だ。
朝早くから昼までは花屋、少しの休憩の後はこの店で仕込み、開店から営業終了まで立ち続け、片付けを終えて家に帰るのはきっと日を跨ぐ時間だろう。
少し眠って、起きて、またその繰り返し。」
「……。」
「気になってはいた。
いつでも迎えてくれる反面、いつ休んでるんだって。
この店に閉店時間はあって無い様なものだって言ったな?
じゃあ、定休日は?」
バツが悪そうに、Aは視線を地面に彷徨わせている。
「…どうせ無いんだろう?
花屋での勤務がない日の午前中にでもまとめて休んでるってとこか。」
降谷は、Aがすぐにこの状況を改善する事を期待はしていない。
時として人は、何かに打ち込むことで忘れたいものがある事を降谷は知っているからだ。
「俺は、この店を知って、貴女に出会って、幸せの片鱗に触れた気がした。
幸せとはかけ離れた生活を送ってきたせいか、最初は戸惑いもした。
月並みな言葉だけど、あぁ…これが幸せなのかって思った。」
彼女と共に未来を歩きたい。
無償の愛で周りを笑顔にする彼女を幸せにしたい、と心から思った。
「貴女が幸せじゃないと意味がないんだ。」
ただ彼女が背負う悲しみを一緒に背負うが出来たら。
そんな大それた事を言える立場でも無ければ、そんな勇気も無い。
俺はただ
貴女がこの先、立ち止まる事への恐怖の中、いつか訪れる限界を前に立ち竦んだ時
ただ側に居たいだけ。
「貴女はそれで、幸せなのか?」
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虎鉄(DC一時お休み中)(プロフ) - 休校さん» 休校様、返信遅れて申し訳ありません!コメント有り難う御座います(^^)上から目線だなんてとんでもない!感想だけでも嬉しいのに、面白いと言って頂けて本当に感激です。この作品は特に、言葉を大事にしたのでより嬉しいです!また読んで貰えると跳んで喜びます笑。 (2020年6月20日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
休校 - とても素敵でした!今まで降谷さんのお話をはしごしてきたのですが、一番面白かったです。(上から目線不快に思われたら申し訳ない! 本当に、本当に、言葉といい、センスといい、ストーリーといい、弟子にしてください笑また、見にきさせていただきます。お疲れ様です (2020年6月15日 21時) (レス) id: e4ab2b5df5 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - 藍さん» 夜分遅く&返信遅くなり申し訳ありません。テーマは幸せ、だったのでそう感じて頂けて何よりです!文字数多くて読むの大変だったかと思いますが、それにも関わらず感想を下さり、本当にありがとうございます!これからも頑張れる様に頑張ります!笑。 (2019年5月13日 1時) (レス) id: f628ddcf07 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 読ませて頂きました!とっても綺麗なお話で、最後の幸せすぎる展開にお恥ずかしながら涙しちゃいました…笑これから続編も読ませていただくのですが、どうしても感想を伝えたくて仕方がありませんでした!これからも頑張って下さい!応援してます(*´ω`*) (2019年5月6日 23時) (レス) id: 8bfd8d1747 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ノンノンさん» 勿論覚えております^_^コメントありがとうございます!桜木美咲…!桜の木が美しく咲く、すごく日本らしくて素敵な名前に、自分でちょっとグッジョブと思ってしまいました笑。ノンノン様のコメントで私は幸せな気持ちです^_^本当に感謝です! (2018年8月2日 2時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年7月6日 0時