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95、身勝手な決断 ページ45

帰宅時間と重なったのか、バスの中はスーツを着たサラリーマンやOLさんでとても混雑していた。
バスが発進したり止まったりを繰り返すたびに、吊革につかまった身体が大きく揺れた。



話がある、と切り出した私を涼は『なに、改まって。なんか怖いんだけど』と笑った。

…きっと涼は、私が何を伝えようとしているのか気付いている。



バスを降りて涼の家までの道をひとりで歩く。


遊びに行くと必ず家まで送ってくれた涼と、何度一緒にこの道を歩いただろう。


鉛を付けたように、足が重い。

あんな優しい人を傷付けようとしている私は、最低な人間だ。
だけど、これ以上一緒にいても、私はきっともっともっと涼を傷付けてしまうから……。

ドックンドックンと緊張で大きく波打つ胸を押さえながら
私は自分勝手な決断を何度も正当化して、涼の家まで歩いた。



少し震える指先で鳴らしたインターホン。

すぐに玄関が開き、涼が顔を出した。



「思ったより早かったね。入って」

いつもより幾分元気がなさそうに笑った涼を見て、私の背中に更に緊張が走った。


「あら、Aちゃん!お久しぶりね」

その時突如聞こえて来た声。
顔を上げると、リビングから満面の笑みで涼のお母さんが顔を出した。


「こ、んにちは!お久しぶりです」

「わ〜、嬉しい。全然会えないから涼にAちゃんを家に連れてらっしゃいって話してたところだったのよ」


ニコニコと。いつもと変わらない温かい笑顔を向けてくれる涼のお母さんから、咄嗟に視線を逸らしてしまった。

だって私、これから涼と…。


「…ありがとうございます」


必至に作り笑いをした私に涼のお母さんは


「そうだ。美味しい紅茶を頂いたの。涼に運ばせるわね」

そう言って、リビングに戻って行ってしまった。



「あ〜…じゃあ先に部屋行ってて」

「…うん。お邪魔します」


リビングへ行った涼の背中を見ながら、きっともう二度と来ることはないであろう涼の家の階段を上った。

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設定タグ:オリジナル , 恋愛 , 青春   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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ユチコ(プロフ) - Blueheartさん» コメントありがとうございます!嬉しい〜( ;∀;)更新頑張ります〜☆ (2018年7月29日 16時) (レス) id: 05c74de8b4 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 更新頑張ってください! (2018年7月26日 18時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユチコ | 作成日時:2018年7月16日 12時

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