80、後ろめたい気持ち ページ30
涼の部屋の天井は真っ白だった。
まだ熱が籠ったままの、鈍くジンジンと疼く私の身体を
涼は優しく抱きしめた。
「……俺、Aのこと、ずっと大切にするから…」
ぎゅっと力が入った涼の腕の中は、少し苦しいほどで、泣きたいわけじゃないのに、涙が溢れて…。
その涙を涼の細く長い指が優しく拭い、泣き笑いする私を、また優しく抱きしめてくれた。
服を着た私たちは、テーブルの上ですっかり溶けてしまったケーキを見て、笑いながら残りを頬張った。
そしていつものように、涼は私を家まで送ってくれた。
涼の私に向けられる視線は、いつもよりずっと優しかった。
「……ただいま」
静かに開けたはずの玄関の音が思いのほか大きく響き、気付いたお母さんと美波が「おかえり」とリビングから顔を出した。
「遅かったわねぇ。茜ちゃんたちと一緒だったの?
せっかくご馳走用意してたのに、連絡もしてくれないんだから」
あ…。誕生日だから私を待っててくれたんだ。
でも、なんだかお母さんの顔を見るのが恥ずかしい…。
「ごめんね!ご飯、あとで食べるから!」
靴を脱ぎそそくさと二階に逃げようとした私の腕を、美波が掴んだ。
「……怪しい。さては、男といたね?」
「は、はぁ!?何言ってんの!!」
鋭い美波の手を振りはらい、階段を駆け上がる私の後ろから
お母さんの声が聞こえた。
「じゃあケーキだけでも食べましょ。着替えたら下りて来るのよ」
…………げ。
またケーキ……。
16人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユチコ(プロフ) - Blueheartさん» コメントありがとうございます!嬉しい〜( ;∀;)更新頑張ります〜☆ (2018年7月29日 16時) (レス) id: 05c74de8b4 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 更新頑張ってください! (2018年7月26日 18時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユチコ | 作成日時:2018年7月16日 12時