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66、風邪気味の彼 ページ16

8月。
空が高くなり、外を歩けば蝉の音が響いている。

川島と別れてから一年。

そして

涼くんと付き合ってから、2か月が経とうとしていた。


ある日、学校からの帰り道、携帯が鳴った。


『……あ、Aちゃん?』

「あれ?涼くん? 珍しいね、こんな時間に電話くれるの」

『うん。風邪ひいて今日学校休んだ〜』


少し掠れた声で話す涼くんの声に

「えっ、熱は!?」

私の声も少し大きくなった。


『熱はもうほとんどないけど……ちょっとまだ本調子じゃないかな〜』

「お家の人は?」

『仕事ー。みんな居ねぇ』

「そうなの?薬は飲んだ?何か買っていこうか?」


何気なく言ったひと言に


『マジで!?バイトは!?』

涼くんが食いついた。


「今日バイト休みなの。お見舞いに行くね。なにか欲しい物ある?」

「なんもない!Aちゃんが来てくれるだけでいい!」

「またそんなこと言って。じゃあ今から行くから」


「待ってる」と少し照れたような声で答えた涼くんとの電話を切り、お店で果物と飲料水を買ってバスに乗った。


帰宅する学生で混み合うバス内で
初めて涼くんの家に行った日のことを思い出した。



三兄弟の末っ子の涼くんには、歳の近いお兄さんがふたり。

初めて会った時涼くんのお母さんが

「男の子ばっかりだからむさくるしいだろうけど、ゆっくりして行ってね」と、優しい笑顔で出迎えてくれた。

二階にある涼くんの部屋に向かう途中、隣の部屋にいたお兄さんと出くわした。

一番上のお兄さんかな?二番目のお兄さんかな?

ペコっと頭を下げながらそんなことを考えていると
私を上から下まで見下ろしたお兄さんが、すっと私の耳元に口を寄せた。


「可愛いね。
涼に飽きたら俺の部屋においで」




「え…?」

「兄貴っ!!!」

お兄さんを突き飛ばして私を部屋に押し込んだ時の涼くんの慌てた顔を想い出して

バスの中、クスクスと笑いが漏れた。

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設定タグ:オリジナル , 恋愛 , 青春   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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ユチコ(プロフ) - Blueheartさん» コメントありがとうございます!嬉しい〜( ;∀;)更新頑張ります〜☆ (2018年7月29日 16時) (レス) id: 05c74de8b4 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 更新頑張ってください! (2018年7月26日 18時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユチコ | 作成日時:2018年7月16日 12時

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