【アイナナ】リトルシンガー (ページ41)

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４０ song. ページ41

「い、いひゃいれふ！」
「くっ……！むかつくほどもちもちきめ細な肌！何の化粧水を使っているか教えなさい！」
「いたた……け、化粧水はあまり使ったことがないのですが」

　解放された頬を労わるように撫でながら言う心春に、姉鷺は信じられない、という風な顔をして絶句していた。

「ありえない……！アンタ、若いからってお肌のメンテナンスを怠ると将来後悔するわよ！！」
「は、はあ……」
「これ、私が御贔屓にしているメーカーのテスターよ。たくさんもらったから貴女にあげるわ」

　姉鷺は自身のブランドバッグから取り出した個包装のテスターを心春の両手に乗せた。小袋に印字されているロゴは、化粧品に疎い心春でも知っている高級メーカーのものだった。

「乳液も一緒に使うのよ」
「は、はい！了解いたしました！」
「洗顔をしっかり行ってからよ！」
「はい！姉鷺さん！」
「お姉さまとお呼び！！」
「はい！お姉さま！！」
「よろしい！！」

　姉鷺は満足げに鼻を鳴らしたのち、エレベーターの中へ吸い込まれていく。扉が閉まるのを見届けてから、心春は万理の顔を見あげ満面の笑みを浮かべた。

「TRIGGERさんのマネージャーさん、とてもお優しい方でしたね！」
「アハハ……そう、だね……」

　「本当、心春ちゃんは凄いよ……」と、どこかげっそりした表情でつぶやく万理に、心春は首を傾げることとなる。

▼ △ ▼ △

「失礼します。ご挨拶よろしいでしょうか」

　万理に続いて心春はTRIGGERの楽屋へと足を踏み入れた。三人は各々自由に過ごしていたようで、一斉に視線が心春に集まる。
　三人の圧倒的なオーラを目の当たりにし、まるで自分がテレビの中へ飛び込んできたようだと心春は錯覚した。

「も、森川心春です！！よろ、よろしくお願いします！！」

　膝に額がつきそうなほど深く頭を下げる心春に、くすくすと小さな笑いが返ってくる。

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。今日は楽しく収録しましょう」

　グループのセンターである天が、そう優しく声をかける。その柔和な微笑みに、カチカチになっていた心春の体から少し力が抜けていった。

「思ったよりもちっこいな」
「楽、失礼だよ」
「せ、成長の見込みはまだあります！」

　心春の傍に寄り、観察する様にそう言った楽に、天は厳しい視線を向ける。
　最近学校で行われた健診では昨年よりも１ｃｍ伸びていました！と訴える心春に、三人はきょとんとしたのち、笑い声をあげた。