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4 song. ページ5

格好のつかない自己紹介に、その場は爆笑の渦に包まれた。
 環くんと呼ばれた男の子をはじめ、お母さんのように窘めていた白髪の男性も控えめに肩を揺らして笑いをこらえている。奥にいる眼鏡の男性や、オレンジ髪の人なんかも目に涙を溜めて笑い転げていた。さらに恥ずかしくなって、消えてしまいたい衝動に駆られ心春はとうとう万理の背中に顔を埋めて身を隠した。

「み、みなさん、そんなに笑ってはいけませんよ!」
「いや、マネジャーだってさっき笑ってただろ」
「女性を笑いものにするなんて、紳士的ではアリませんよ!」

 そんな声が聞こえたかと思うと、心春の傍で「Hello?」と流ちょうな英語が降ってきた。
 そっと万理の背中から顔をあげると、この世のものとは思えないほど美しいご尊顔がそこにはあった。

「ワタシは六弥ナギです。同じ事務所のタレントとして、よろしくお願いしますね。コハルとお呼びしても?」
「は、ハイ」

 やんわりと伸ばされた手。シェイクハンドをもとめられ、条件反射的にそっとそこに小さな手を重ねた。すると、掬うように持ち上げられたかと思えば、ちゅ、と唇が手の甲に触れて彼女の脳はもはやショート寸前だ。

「あわ、あ、あのっ」
「ナギくん……そろそろ心春さんが爆発しそうだから、ほどほどに」
「oh……残念です」

 肩をすくめて眉を下げるナギに、心春はここでやって行けるのか一気に心配になった。

 その後、なんとか万理と紡に宥められて皆の爆笑の渦が落ち着いた頃、心春の先輩となるアイドルたちは自己紹介を始めた。話してみれば皆さんそれぞれ個性があって、とても魅力的で、緊張はだいぶ和らいでいった。

「心春は曲も歌詞も全部自分でやるんだな」
「はい……まだ未熟ではありますが」
「シンガーソングライターですか。私と同い年なのに、凄いですね」

 一織が感心したようにつぶやく。照れ隠しをするように「えへへ」と笑うと、隣にいた環がぐいっと興奮したように距離を詰めてきた。

「俺! こはるんの歌ききてえ!」
「そうだな〜、気になるよな」
「同じ事務所の所属となる仲間として、一度聞いておきたいですね」

 どうする? 大丈夫? そんな視線が万理から心春へ送られる。
 きっとここで歌えなかったら、今後大勢の方の前で歌うなんて不可能だ。そう思った心春は手汗で湿った拳を握り締め、意を決して大きくうなずいた。

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作者名:冬眞 | 作成日時:2021年7月3日 13時

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