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「壮五さん、だ、大丈夫ですか?」
体調でも悪いのかと思ってわたわたしている心春に壮五は「そ、相談があるんだ」と言った。
壮五さんが、私に相談。いつもは助けられてばかりだから、頼られていることが素直に嬉しかった心春は意気揚々と「私でよければ……!」と握りこぶしを作って承諾すると、壮五は弱々しく笑った。
「とりあえず、座ろうか」
壮五に促されるままソファに横並びで座った心春は身体を斜めにして壮五のほうへ向き、膝を突き合わせ真剣な表情で問いかけた。
「それで、ご相談とは」
「……信じてもらえないかもしれないけれど、驚かないで聞いてほしい」
(え、そんな大事なお話なのでしょうか……)
神妙な面持ちで生唾を飲み込み、心春はひとつ頷いた。
「実は、僕……違う星からやってきたんだ」
チガウ、ホシカラ、ヤッテキタ。
壮五の言葉を理解するのに、しばらくかかった。
(えっと、違う星から来たということは、壮五さんは宇宙人さんと言うことでしょうか? いや、壮五さんからみたら私が宇宙人?)そこまで考えが至った時点で気になることがひとつ浮かび、彼女はそっと質問をした。
「ち、ちなみに、どちらの惑星から?」
「え……ど、土星だよ」
そっか。土星かあ。心春の頭には輪っかのついた星がくるくる回りだす。
「皆さんは、そのことをご存知なのですか?」
「……事実を話したら、みんなを騙していた僕を嫌いになってしまうと思ったら、打ち明けられなくて。でも、心春ちゃんなら、受け止めてくれるかもって思ったんだ」
そう言って微笑む壮五の表情は、とても切な気で、心春も一緒に泣きそうになった。
信頼している仲間に嫌われるかもしれない恐怖に耐えながら今まで過ごしてきた事実に、深い悲しみが彼女を襲う。
「みなさんは、壮五さんのことが大好きです!! たとえ壮五さんが違う星からいらしたとしても、嫌いになるわけがありません!」
握りこぶしを作って、必死に思いを伝える。
感情が昂って、目からはぽろぽろと涙が零れてきた。
「壮五さんも、ずっと秘密を隠していて、お辛かった、ですよね……?」
ひっく。と嗚咽を溢しながらも、壮五の心中を察してさらに泣く心春に、壮五は慌てた様子で「こ、心春ちゃん、心春ちゃん」と名前を呼び、入り口のほうを指さした。
歪む視界でそちらを見る心春の瞳にはIDLiSH7の皆が映り、陸の手には「ドッキリ大成功」と書かれた札があった。
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作者名:冬眞 | 作成日時:2021年7月3日 13時