27 song. ページ28
「俺たちも、お前さんに出会えて良かったと思ってるよ」
「私たちのハートをこの炎のように熱くさせてくれたコハルの歌に、とても救われました」
そんな、いつも救われているのは、私の方なのに。そう思って涙ぐみそうになるのをぐっと堪える心春を見て、大和は「変な顔」と笑った。
「泣かないで、コハル。貴女の涙をみると、心が切なく締め付けられます。ほら、私の美しい顔をみて、元気を出してください」
「自分で言うかね、それ。……まあ、確かに近くで見るとほんと美形だよな。ハーフなんだっけ? どこの国?」
しんみりした気分を紛らわせてくれるように、大和はナギへ問いかける。その気遣いに嬉しく思いながらも、心春も気になってナギを見つめた。確かに、本当に綺麗なご尊顔だと、心で呟く。
「ノースメイア。北の果てにある美しい国です」
ノースメイアという国の名は心春にとって、とても聞き覚えのあるものだった。
「ノースメイア! 母が一度行ったことがあると言っていました! とても綺麗で、穏やかで、将来はノースメイアに住みたいと言っていたほど大好きな国みたいでした」
心春の母は一度旅行で訪れたときに撮影したノースメイアの写真を、昔からよく彼女に見せてくれた。オーロラや、流氷、宮殿、そして、おおらかに笑うノースメイアの住民たち。どれも美しくて、豊かで、自由で、魅力的なところだと幼心ながらに思っていた。
「母が愛した国に、私も一度行ってみたいです」
「OK。それではコハルにノースメイアをガイドします。そして、愛の宮殿を建てふたりで永遠の愛を語り合いましょう」
「いやなにもOKじゃないから」
いつものナギの冗談のような本音に「あはは」と心春が笑うと「笑い事じゃないから。もっと危機感を持ちなさい」と大和に叱られて、彼女は首を傾げることとなる。
それぞれが役割を果たして、夕方。
陸たちが見事釣り上げてくれた魚も、環と壮五が作ったカレーも美味しくて、心春の胃袋は満足げに膨らんでいた。
お腹が満たされた後は、皆で楽しめるゲームをと万理が考案した王様ゲームが始まる。
心春は一織の妹になりきるというお題が当たり、上目遣いで「いおり、お兄ちゃん?」と呼んだあとから彼と視線が合わなくなり、しょんぼりする心春の頭を撫でながら壮五は「照れ隠しだから、ね?」と一生懸命に慰めた。
そんな悲しい出来事が起きながらも笑いの絶えない空間に、心春の心は満たされていた。
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作者名:冬眞 | 作成日時:2021年7月3日 13時