２５ song. ページ26
ぶっきらぼうだけれど、頼りない心春をいつも助けてくれる一織。
人に甘えてもいいのだと教えてくれた大和。
美味しいご飯を作って、いつも元気をくれる三月。
素直で真っ直ぐな言葉で勇気をくれる環。
いつも優しい表情を向けてくれて気にかけてくれる壮五。
心春の歌を大切にしてくれるナギ。
素敵な笑顔で明るい気持ちにさせてくれる陸。
心春は、皆のことが大好きだ。心から、IDLiSH7の歌を愛している。
大切な人が目の前で傷ついていても、救いの言葉をかけることなんてできやしない。
自分には歌うことしかできないから、せめてその気持ちだけでも届いたら、いいな。そんな思いを込めて彼女は歌詞を紡ぎ、ギターをかき鳴らした。
最後のフレーズが、夜空に溶けていく。
ギターは心春の涙で、濡れていた。
(届いた……でしょうか)
いまだぽろぽろと涙が零れ出てくるのをそのままに、心春は皆を見つめる。
俯いたままの一織が、一歩、一歩、彼女の方へ歩み寄る。そうして、背中を丸めて、心春の肩に額を乗せた。
「……ありがとう、ございます……森川さん」
肩にじわりとした暖かな感触が広がる。それに気づいて、心春の瞳にはさらに涙が溢れた。
子供のように泣く心春と静かに涙を流す一織を、三月がまとめて包み込むように抱きしめた。
「ありがとな、心春。すっげえ元気でた。一織も、頑張ったな」
「兄さん……」
三月の手が、心春と一織の頭に乗って、わしゃわしゃと撫でる。
くすぐったくて身を捩る心春の頭を、今度は大和が撫でた。
「ありがとな、ハル。お陰さんで、俺たちも踏ん切りがついたわ」
心春が周りを見渡せば、皆の顔には笑顔が浮かんでいて、彼女も自然と表情が緩んだ。
後日、環と壮五がデビューすることを万理から教えてもらった心春。
大和が言ってた「踏ん切り」はこの事だったのでしょうか。そう、彼女は考えた。
でもそれは「諦め」なんかじゃないことは、心春にも分かっていた。
それに、彼女自身が近い未来、七人が「IDOLiSH7」として日本中に素敵な歌声を響かせることを確信していたからこそ、複雑な心境ではあっても悲観的な感情はなかった。
「大神さん、私も、頑張ります」
きゅっと握りこぶしを作ってそう宣言する心春に、「一緒に、頑張ろう」と返してくれたことが嬉しくて、へにゃりと笑った。
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作者名：冬眞 | 作成日時：2021年7月3日 13時
