72.加速する歯車 ページ22
クリスマスの翌日。
私はスマホのディスプレイに映る人の名前を見て
一息つき、通話ボタンを押した。
心臓の音が騒がしい。
「もしもし…」
「はい、煉獄桃寿郎です!!」
「あ、あの…この前東京で声をかけて
電話番号を教えてもらったAAです」
声もなんとなく杏寿郎さんに似ている。
そして声が大きい。
「ああ!この前のお姉さんですね!」
「電話、出てくれてありがとうございます」
「どうしてですか?」
「だって…ほら、知らない人にあんな突然声かけられて…
あ、危ない人かもって思わないですか?」
私だったら電話出ないかも。
「いや!全く問題ないです!
それに、何故だかあなたを待っていた気がします」
私を…待っていた?
どういうこと…?
「それって…」
「Aさん、もう一度会ってお話できませんか?」
「…もちろんです!私も直接聞きたいことがあって」
「はははっ!
Aさん、失礼ですが俺より年上ですよね?
敬語使わなくて大丈夫です!!」
「あっ、えっと…うん!」
「年末で部活がないので、そちらに向かいます!!
どこか駅前とかで落ち合いましょう!!」
「え!?いいの!?学生なんだし、私が…」
「観光がしたいので!旅から学ぶことも多いですし!!
それにまとまった休みでなければ、
遠出が許されておりません!!父が厳しくて!!」
そうか…申し訳ないけど、それなら…
「分かりま…分かった!じゃあ、いいかな?」
溌剌とした声で彼は返事をし、
私は明日、駅前のカフェで桃寿郎くんと会う約束をした。
ドクドクと全身に熱い血が巡っていく感覚。
運命の歯車が回り出したような気がした。
「Aさん?」
「あ…はい!」
「はははっ!どうした?何だか顔が赤いぞ?
よもや、熱でもあるのか?」
「いえ!元気です!!」
慌てる私を不思議そうに見つめる綺麗な瞳。
杏寿郎さん、
あなたが元の時代に帰る糸口が見つかりそうです。
正直、寂しくて、この居心地の良さが
初めからなかったように消えてなくなってしまう
怖さや不安はあるけれど、
あなたの幸せのために私は頑張るよ。
「杏寿郎さん、私、明日の午前中出かけます」
「ん?そうなのか!承知した!」
「お昼には帰ってきますね。
お昼ご飯、何か食べたいものはありますか?」
「そうだな…オムライスがいい!」
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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume
作成日時:2023年9月17日 0時