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71.積もる雪 ページ21

ゆっくり目を開けて気がついた。

 私はどうやら彼の頬に口づけをしてしまったようだ。

「ご、ごめんなさいっ」

「…いや!だ、大丈夫だ!!

 それより、怪我はないか?」

「全然っ!大丈夫です!問題ないです!」


 急いで彼の口元についたケーキをティッシュで拭うと、

 彼の左頬にほんのりリップがついてしまっていることに

 後から気がついた。

 それは、"私がつけてしまったもの"だと思うと

 すごく恥ずかしくなってきて頬が紅潮していくのが

 自分でも分かるくらい熱くなった。


「すみません」


 そう言って、私は静かに彼の左頬を拭った。

 すると不意に右腕を杏寿郎さんに掴まれた。


「自分で落とすから、案ずるな」


 優しい声に彼を見つめると、

 耳を赤らめた姿で余計に恥ずかしくなった。


「なんだ!…あれだな!

 良いクリスマスプレゼントをもらった!」


 照れ隠しをしているのか、

 杏寿郎さんはどこを見ているのか分からない。


「え!?こ、こんなのがプレゼントになりますか!?」

「もちろんだとも!」


 そう満面の笑みで言われると、益々身体が熱くなる。


「も〜!やだなあ!」


 私はこの底抜けの明るさに何度も救われた。

 出会ってから、そう年月は経ってないけれど、

 昔から一緒のような気さえしてしまう。


「そうだ!Aさん!」

「はい?」

「後ろを向いてくれないか?」


 後ろ?私は彼の言う通りに、背を向けた。

 すると杏寿郎さんも立ち上がったようで、

 背中に彼の指先が当たる感覚がした。


「何です?」


「しーっ」


 何やら文字を書いているのだろうか?

 彼の人差し指が私の背中をなぞった。

 長めの文字のようで、さっぱり分からなかった。


「何て書いたの?」


「ん?それは秘密」


「え?」


「いつか、時が来たら教えよう」


 杏寿郎さんは私の前に立つと、

 左肩をトントンっと優しくたたいてはにかんだ。


「残りのケーキを食べよう!」


「あ…はい!」



 静かに降り積もる雪が街を真白に染める。


 あなたの知らないところで

 私の心にもあたたかな気持ちが

 そっと、静かに積もり積もっていく。



 気がついた時には、
 
 もう引き返せないほど深くなっていそうで

 私は少しこわい。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2023年9月17日 0時

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