70.クリスマスディナー ページ20
クリスマスケーキを無事に受け取り、
家に帰宅した私たちはクリスマスパーティーを始めた。
パーティーと言っても、前日のうちに仕込んでおいた
ビーフシチューにデリバリーで頼んだピザ、
帰りがけに買ったチキン。
1人だったら絶対に食べられない量だし、
何なら2人前より多いように感じるけれど、
おそらく彼はペロリと平らげてしまうだろう。
「いただくとしよう!」
「ビーフシチューどうですか?」
「うまい!うまい!
このような美味なものを食べたことがない!」
「杏寿郎さんったら、大袈裟です」
「至って真面目に言っている!また作ってくれないか?」
そんなこと言われたら
毎日でも作ってあげたくなってしまうじゃないか。
「もちろん!あっ、ケーキもありますからね」
「うむ!ケーキは別腹だ!」
*
たくさんあった料理は
目の前にいる彼の口に吸い込まれていった。
「ご馳走様!実に豪勢な料理だったな!
千寿郎にも食べさせてやりたい!」
「そうですね!
ビーフシチューなら、後でレシピを教えますよ!」
「レシピ…作り方のことだな!」
「はい。そろそろケーキを持ってきますね!」
私は冷蔵庫へ向かい、クリスマス柄があしらわれた
ケーキの入った箱を取り出すと、テーブルの上に置いた。
ホールケーキにしようか迷ったが、
私と杏寿郎さんのふたりだし、
小ぶりのブッシュドノエルにした。
「食べましょう」
「うむ!では、俺が切り分けるとしよう!」
「いいのですか?」
「もちろんだ!さすがに二等分では食べづらいと思うので
いくつかに分けさせてもらう!」
彼は真剣な眼差しでケーキを均等に切り分けた。
その所作ひとつとっても、彼は上品だなと思う。
「ありがとうございます!では、いただきます!」
「うむ!俺もいただこう!」
甘い、甘い、ブッシュドノエルを口に運んで
味わって食べる。
「おいしい」
「うむ!実に甘くてうまい!」
「あ、杏寿郎さん、口元にケーキが。
今、ティッシュを…わっ!」
私はそう言ってティッシュを取りに行き、
杏寿郎さんの口元を拭こうと彼に近づいた時、
滑って転倒してしまった。
咄嗟に目を瞑ると彼の匂いが私を包んでいた。
それと、唇にあたたかな感触が…
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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume
作成日時:2023年9月17日 0時