67.気になる事ばかりで ページ17
「じゃあ、またね！
今年は今日で会えるのが最後かな？よいお年を！」
「あ！矢田川さん…」
「ん？」
「さっきの万華鏡って…」
「万華鏡？ああ、あれは宝物なんだ。
昔からついお守りみたいに持ち歩いちゃってて」
昔から…やっぱり、あの時の彼は矢田川さんなんだ。
「Aさん？どうかした？」
「あ、いえ！」
「たかちゃーん！早く行こー！」
凛子ちゃんは矢田川さんのコートを引っ張って
彼を急かした。
「こーら、凛子！そんなことするからお母さんに
まだ小学生が抜けてないって言われるんだぞ？
もうすぐ2年だろ？」
矢田川さんに制された凛子ちゃんはむくれて
先に歩き出してしまった。
「中学1年生なんですね？」
「うん。俺と姉がそもそも年が離れているのもあるし、
姉がかなり若い時に産んだ子だからね。
お姫様のお世話は大変だよ。
じゃあね！杏寿郎さんによろしく」
矢田川さんは凛子ちゃんの後を追って
早足で行ってしまった。
その背中にあの日の彼を重ねてしまう。
「Aさん？先程のは…」
入れ替わるように温かい飲み物をふたつ手にした
杏寿郎さんがやってきた。
「矢田川さんに会いました！偶然でびっくりです！
姪っ子さんと来ていたみたい」
「そうなのか！挨拶できずに申し訳なかったな！」
「よろしく伝えてって言っていましたよ」
杏寿郎さんは温かい紅茶を私にくれた。
「少し座ろうか？あそこのベンチが空いている！」
「そうですね！」
あの万華鏡と矢田川さんのことを確かめたいと思う反面、
それを確かめてどうするのか？とも思う。
確かめたら何か変わるの…？
正直なところ、
気になってモヤモヤしている自分がいるのも本当のところ。
それから、桃寿郎くんのことも確かめないといけない。
「元気ないのか？」
「え？」
「いや！先程から難しい顔をしているのでな。
…よもや、俺といると楽しくないか？」
杏寿郎さんはそう言って少し寂しそうな表情を見せた。
「違います！！」
ものすごい勢いで反論したので、
杏寿郎さんは口を開けて驚き、豪快に笑った。
「はははっ！！それなら良かった！
とはいえ、何かあったのか？」
心配そうに見つめる瞳。
私はなんて失礼なことをしていたのだろう。
せっかくお出掛けしているのに他のことばかり考えていた。
「何もないです！」
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作者名：狐姫 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/kohime_yume
作成日時：2023年9月17日 0時
