66.万華鏡の持ち主 ページ16
「Aさん、
何か温かいも飲み物を買ってこよう！何がいい？」
「そうですね…紅茶がいいです！」
「うむ！少しだけここで待っていてくれ！
すぐそこの売店で買ってくる！」
「え！？あ！一緒に…！行っちゃった」
杏寿郎さんは思い立ったらすぐに行動に移すタイプだ。
物事の判断を決めるのもすごく早い。
私はどちらかというと優柔不断な方だ。
近くにストーブが設置されていたので、
手をかざして温まっていると、カランと軽い音が聞こえて
何かが私の足もとまで転がって止まった。
「すみません！」
「いえ、だいじょ…ぶ…」
拾って渡そうとした時、
その物を手にして心臓がドクンっと音を立てた。
それは見たことがあるものだった。
というよりは、私も持っているもの。
「万華鏡…」
あの時もらった万華鏡と同じものだ。
その万華鏡はあまり見かけないようなもので、
小ぶりだが
印字がされていた。
ただその文字は漢語なのか、よく分からず読めなかった。
高校のあの秋の日、狐のお面のあの人が持っていた万華鏡。
彼は同じものを２つ持っていて１つを私にくれた。
つまりこの目の前にいる人が…
「え！？矢田川さん！？」
「Aさん！？」
矢田川さんが狐のお面の彼なの…？
「偶然だね！あ、それ拾ってくれてありがとう」
「あっ！はい、どうぞ！」
「もしかして杏寿郎さんと？」
「え！？」
「そうかあ〜、妬けるなあ」
「や、妬ける！？」
突然そんなことを言われて私は目を丸くした。
「あははっ！冗談だよ。可愛い反応するね」
「もうっ！揶揄わないでください！」
寒いのに恥ずかしさで顔が熱くなる。
「たかちゃーん！」
声がすると、中学生くらいの女の子がこちらに向かって
走ってきた。
「たかちゃんお待たせ！…このお姉さんは？」
「このお姉さんは職場の後輩だよ。
Aさん、この子は姪っ子の
姉の子なんだ」
姪っ子さんか。仲が良いんだなあ。
「矢田川さん、たかちゃんって呼ばれているんですね」
「照れくさいけどね。そうなんだよ。妙に懐かれちゃってね」
「たかちゃん！さっきあっちにビーフシチュー売ってた！
食べたい！！」
「はいはい。今日は姉が仕事でさ、
父親いないから俺が子守なんだよね」
矢田川さんの知らない一面を見た。
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作者名：狐姫 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/kohime_yume
作成日時：2023年9月17日 0時
