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52.【過去】引いては戻るヨーヨー ページ2

「お名前は?」


「…奈津子だよ」


「奈津子ちゃん、はい、これ」


 私は花束から数本抜き取って彼女に渡した。

 
「え?…でも、これはお姉ちゃんの…」


「あ!ちょっと待って」


 持っていた鞄の中から

 淡い色紙を取り出して小さな花束を作ると、

 私は髪を結っていたリボンをほどいた。


 秋の風に伸ばした髪が揺れる。


「ヨーヨー壊しちゃったから、

 代わりにはならないけれどお詫びとして受け取って!」


「わあ!綺麗!…でも、お姉ちゃんは悪くないよ!

 私がよそ見をしていたから…」


「いいんだよ!受け取って」


 奈津子ちゃんは花束を受け取ると、

 嬉しそうに目を細めて微笑んだ。


「ありがとう!」


「奈津子ちゃんはお母さんと来たの?」


「うん!…でもはぐれちゃったみたい」


 迷子になっちゃったんだ。

 すっかり暗くなってきたし、探してあげないと…


「お姉ちゃんが必ず見つけるよ!」


 私がそう言うと、奈津子ちゃんは瞳を潤ませて頷いた。


 川沿いの花野は土手ほど人がいない。

 彼女のお母さんはそう遠くには行っていないはず。

 もしかしたらこの近くにいるかも。


「奈津子ちゃん、お母さんと最後にいたのはどの辺?」


「うーん…あの土手のあたりかも…

 不思議な鳥を追いかけていたら土手を下りて来ちゃった」


 そうだとするなら、お母さんはまだ土手の方かもしれない。

 そう考えて土手に目を向けた時だった。
 

「奈津子ー!!」


「…お母さん?お母さん!!」


 土手から勢いよく下りてきたのは奈津子ちゃんの

 母親と一人の青年だった。


「良かった。ちょうどお母さんを探しに行こうと思っていた

 ところでした。…奈津子ちゃんのお母さん、すみません。

 私がぼうっとしていたばっかりに、ヨーヨーを

 割ってしまいました」


「そんなの全然いいのよ。きっとこの子が慌てて走っていて

 あなたにぶつかってしまったんでしょう。

 …制服、汚れてない?大丈夫?」


「全然!大丈夫です!」


 奈津子ちゃんは私があげた花束を彼女の母親に渡した。


「これ、お姉ちゃんがくれた!」


「え!?こんな可愛いお花を?いいの?」


「はい。ヨーヨーの代わりにはなりませんが…」


「ありがとう。とっても綺麗ね。

 あなた方のおかげで娘に会えました。本当にありがとう」


 あなた方?



 

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2023年9月17日 0時

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