第10話 奇跡なんて早々起こらない�� ページ36
空が青く染まる。
微かにする藤の花の香りに誘われて、歩いて行けば私達は最初の場所へとたどり着いた。
「咲々芽、ありがとう！！」
『うん。どーいたしましてだよ』
錆兎と共に歩いて行けば、頭に包帯を巻いて涙を流している義勇を見つけた。彼はこちらに気づくとすぐに走ってきて、錆兎の安否確認をし始めた。どうやら、気を失った義勇をおいて、一人仇の鬼を斬りに行ったそうなのだ。
彼にこんなにも泣かれるんだから、幸せもんだねぇ錆兎は。「男がそう簡単に泣くんじゃない！」と義勇に言いながらも、申し訳なさそうに眉を下げている。自分はあのまま、鬼に再戦して、命を落としていたかもしれない後悔が押し寄せてきているんだと思う。
「おかえりなさいませ。おめでとうございます」
一番最初に聞いた声と同じ言葉が、聞こえてきた。
今まで泣いてる義勇にしか目が行ってなくて、周りを見ていなかったが、結構な人数の人達が残っていた。
これは集まった人達、全員が残っているんじゃない？
「これより、皆様に階級を刻ませていただきます。階級は十段階ございます」
『(階級？)』
どうやら、鬼殺隊には階級制度が存在するようだ。上から甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸と説明され、私達は一番したの癸だそうだ。
「本日、刀を作る鋼、玉鋼を選んでいただきますが、刀が出来上がるまで十日から十五日かかります」
やっぱり、ゲームのようにパパっと出きる訳じゃないよね。わかってたけど、十日から十五日は長いかも。でも、その間に傷を癒せるとかいろいろ隊士になる準備ができるからいいのかも。
ぱんっ。
手を叩く音が聞こえると同時に空から、カァ〜カァ〜と聞き覚えのある鳴き声が聞こえた。夕方とかによく聞いた烏の鳴き声だ。
そして、私の肩に黒い烏が止まった。
肩に来た重みにちょぴっと驚き、視線を向ければ至近距離に真っ暗な瞳と体の鳥。鎹烏という連絡用の烏だそうだ。
「ヨロシクネ」
『(しゃ、しゃべったっ！？)ヨ、ヨロシク、オネガイシマス.....』
烏ってしゃべるもんだっけ？
頭いいと言われてた鳥だから、今しゃべったことにいよいよ知能がレベルアップしたのかと思ってしまった。
片言になってしまったのは、許して。
予想外だったんですよ、マジで。
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作者名：夏菜沙 | 作成日時：2023年4月15日 14時
