第10話 奇跡なんて早々起こらない�� ページ35
『刀も折れてるし、擦り傷もある。君を運ぶ時に引きずらせてもらったけど、怪我人だから最善の注意をはらった』
手には、錆兎の刀を持ち、鞘から出してみせた。
綺麗に折れられてるし、もう鬼の頸を斬ることもできない。これで鬼を倒せるなてムリでしょ。
目線と自身の手を使い、錆兎の怪我している箇所....腕と全く同じ私の腕で代わりに説明して見せる。
『わざわざ命を捨てに行くの？』
「だがっっ.....アイツは、鱗滝さんの弟子をっ.....食って.....！！！」
『それで君まで食べられたら、誰が悲しむのかわかってるの？』
「！！」
その鬼は、錆兎と義勇の育手の人の今までの弟子が、ここに来る度に喰らってきたのだろう。それは、育手の鱗滝さんという方を慕っている錆兎(慕っていると伝わってくる)からしたら、非常に頭にくることだし、倒したいと今までの弟子達の仇を討ちたいと思うだろう。
それで、錆兎までもが命を落としたらどうなる？
『君の大切な鱗滝さんが悲しむ。......どこで別れたかは知らないけど、義勇だって悲しむよ』
「.........」
『......人の命は一度失われたら、もう帰ってこない』
私のように。
今の私はここで命をおとして、この世界に転生した。
本当だったら、そんなことあり得るかも不明なのにだ。なのに私は、ここに存在している。
もう一回はないんだよ。
『それに、せっかく友人になれた人の命が失われるのは悲しいよ、私』
「........すまなかった」
『！』
「俺は冷静になれていなかったみたいだ」
悲しそうな泣きそうな......それでも、その瞳は真っ直ぐ。目の前の少年は......、錆兎は冷静になってくれたみたいだ。
でも、悔しい事には変わらないのは伝わってくる。
当たり前だよね、その鬼を斬れないなんて悔しいはずだ。それでも、鱗滝さんと義勇を悲しませないために彼は決断したんだ。
「ありがとう、俺を止めてくれて」
『どーいたしまして』
数日前に
『うん、冷静になれなかったら殴ってでも止めようと思ってたよ』
「......冗談か？」
『え、冗談に聞こえる？』
「(見た目によらないとはこのことだな)」
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作者名：夏菜沙 | 作成日時：2023年4月15日 14時
