Rollin'【番外編8】

_ ページ5

Side BLACK


「ん〜…はぁ、」

いつの間にか、意識が飛んでいて、ゆっくりと目だけを開ける。

何とか先ほどよりは体が動いて、一旦ベッドに腰かけて、
右側の壁に身体を傾けて、もう一度目を閉じる。

「…はぁ…はぁ、はぁ」

サーッと音が鳴りそうなほど、砂嵐の視界。
このまま立ち上がると確実にぶっ倒れる。

ちょっと落ち着くまで…と思ったけど、耐えられず。後ろに倒れこんだ。
膝を曲げて床に足を付けているが、上半身はベッドに預けて、
本来寝る方向に垂直に倒れこんでしまっている。

まぁ、前に倒れて床に顔ぶつけなかっただけましかな、とか冷静な自分もいるけど。

もう一度、ゆっくり体を起こして、無理矢理そのままの勢いで立ち上がる。


「はあ、ハァ…」

壁に手を付いて、目を閉じたまま歩き出す。
苦しくて、しんどくて情けなくて、気持ちが悪い。



家の中だから、ある程度手探りで歩けば、洗面台までたどりついた。

「うわ…ひでぇ顔…」

水を出しながら、鏡を見れば、真っ青な自分が映った。




タオルで顔を拭いたあともそのまま暫く顔を埋めたまま深呼吸する。

「っ、」

眩暈というか、頭のふらつきがまだ残っていて、座り込みそうになるけど、
そのまま、一旦リビングに移動した。



ドサッとソファーに倒れこみ、背もたれに身体を預ける。


新しく購入したばかりの時計を腕に巻く。


「…まじかよ」


電車に乗り遅れるなどという騒ぎではない。もうすぐ開演だ。








それでもどうにもならない体の重さにまた目を閉じる。

「はぁ、はぁ…行かないと…」

またフラフラしながら立ち上がる。




着替えを済ませて、荷物をまとめて、そこでルーティンの何かをしていないことに気付く。



…薬。この状況で飲まないのはまずい。
どうせ、ここまで遅くなってしまったのだ。
ご飯は無理だけど、ゼリーか何かがあったから。

そう思って、キッチンに向かった。





「…うぅっ。」

しんどい。東京の電車はなぜこんなにも人だらけなんだろうか。
ドアを背もたれにして立ったまま無意識に声が漏れる。
マフラーにマスクもしてるし、みんなスマホ見てるし、気付かれてないと思うけど。



電車は約1時間遅れて乗った。
元々から少し離れた駅で途中下車して、タクシーに乗り換える予定にはしていたものの、ちょっともうそろそろ限界だ。

予定より2駅早く降りて、暫く、壁に手をついてじっとしていた。
座り込むと立てなくなると思ったが、近くにベンチがない。

__→←君との距離を《リク》

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す