Rollin'【番外編10】

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Side PINK


「…仕事、ドタキャンしちゃったな」

最近は感染対策の観点から少人数の撮影が多い。


北斗がソロの仕事が忙しく、俺達は他の4人と別日の撮影。
二人での撮影を終えたあと、北斗の一人での撮影を先にやってもらい、その後、俺が撮影という流れだったが、病院に駆け込むことになってしまった。


『花粉症も最近辛そうでしたから、発作続いてたんですかね…』

「…それにしても残量少ないのになんで予備も持ってないの」


色々な調整をしてくれてるだぁくんにそう言っても仕方なんだけど。
乱暴にスマホのボタンを押して通話を切る。


挿管していまだ目を覚まさない北斗を見つめながら、俺が勝手にイライラしている。


……撮影のときは体調が悪そうな素振りも感じなかったし。
あのタイミングでトイレに行かなかったらどうなっていたろうか。ゾッとしてしまう。




「……ほくと、？…北斗、分かる？」

暫く様子を見ていると、ゆっくりと瞼が開く。



「…っ、良かった、…ちょっと待って」

ぱちぱちと瞬きをする北斗。
急いでナースコールのボタンを押す。


いざ、目を覚したのを見ると、怒りの感情はどこかへ行き。


「ほら、泣かないで大丈夫だから。」

代わりにあんずが甘えてくるときみたいなうるうるした瞳に、何だか親心のような兄心のような、そんな気持ちになる。



「…うｯ、！…けほっ、こほっ、」

挿管を抜くときは少し苦しそうで、せめてと腕をさすった。



「完全にコントロール不良。
なんでもっと早く来ないかねぇ」

黒田先生も呆れ顔で見下ろす。



「…ふははは！」

「なーに笑ってるんですか、笑」

秋山くんが吹き出した俺につられて笑っている。
黒田先生も北斗も嫌なものでも見たような顔してるけど。




「いや、何かこういう状況がデジャヴ過ぎてさ」

俺が言うと、しゅんとなる北斗に思わず笑ってしまう。



「笑い事じゃないんですよ本当に」

黒田先生の冷ややかな視線もまた面白かった。

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