Rollin'【番外編10】

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Side BLACK


「もし、もし？」

『今は一人？』

「……せんせ、どうしよ…ｹﾎｯｹﾎｯ…」


『喘息が出たか、……』



先生の声は、いつもの優しいものじゃなくて、
でも、確実に先生の声で。



それを聞くと俺は、


安心と、



「……はぁっ、……ご、ごめんなさい。俺、
加湿器とか忘れちゃって……それで、……」



罪悪感と、



「はぁっ、……ｹﾎｯｹﾎｯ、
…でも、薬も飲んでるし！

毎日美味しいご飯食べたいけど、食べたら太っちゃうし浮腫んじゃうし、撮影に響く…
だから最低限のご飯で頑張ってる。

でも、だめなの、！

……ﾊｧｯ、はぁっ

俺、…俺の心が弱いからっ、……はぁっ、」




恐怖が一気にあふれ出した。

ポロポロと涙が溢れてしまって、声が震えた。




『北斗くん、落ち着いて。大丈夫。
まだ早い時間だから病院は開いてない。
とにかく今はマネージャーに連絡して、食事を用意してもらって、朝の薬と解熱剤を飲んで。』


そう言われて気づく。
これが冬なら夜だと言われてもおかしくない時間帯。
すぐに先生が気付いて連絡をくれただけで……


とにかくこれ以上悪化させてはいけないと
もう一度、吸入しておく。
『ゆっくりね』と先生の声がした。



「………昨日、お粥買ってくれてたみたい」


『さすが気の効いて、奥ゆかしいだあくん。
……貧血はどう？少しはましになった？』


「分かんない……ぐるぐるしてるけど、それが熱のせいなのか貧血なのか、」


『……まぁ両方だと思うけど。今日そっちに行くから』


「……えっ？今なんて？」


『薬飲んだら報告すること。』



ブチッ、と通話が切られる音がする。


………昨日の樹。こんな気持ちだったかな。



なんて、言ってる場合じゃない。
だあくんの気遣いは無駄に出来ないし。
呼吸も少し落ち着いたから食べないと。



…それにしても、…この熱下がらなかったら……



つーか、明日以降の分の台本覚えてない。
今日、覚えないと。


鏡越しの俺、酷い顔してる。
真っ青じゃん。



「……っ、！？」


ぱくぱくぱく、ぱく、ぱく、………ぱく。


少々、口が重くなってきたところで手を止める。



「……いっ、たぁ、」


忘れかけていた腹痛が戻ってきた。

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