母親の個性 ページ18
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Aが己の心を落ち着かせそうとしていると、「じゃあ」と轟は言葉を続けた。
「リストバンドが消えたのは？」
「あ……それは母の個性です」
包帯で動きづらくなっている左手を胸の前に持ってくる。
指を動かすと少し痛い。
「私の個性、轟君と同じで右左で分かれてるんです」
「え……」
「右が『癒し』で、左が『破壊』です」
轟が掴んでいる右手は“人を癒す”力。
そして左手は“物を壊す”力。
「じゃあ、いつも使っている『解体』は……」
「両手で触れて同時に発動させるとそうなるんです」
幼い頃に試して発覚した偶然の産物だった。
病院で詳しく調べてもらってもメカニズムは解明できなかった。
「不思議ですよね……」
でもサポート科では重宝されているのでとても満足している。
なんて笑って言うと、轟が「あっ」と声を漏らした。
「リカバリーガールがいねぇんじゃ、傷が癒せねぇ……」
保健室に行ってもリカバリーガールが不在であるとさっき告げた。
そのことを気にかけているのか、轟はAの右手首を掴んだまま狼狽えはじめた。
「お前、自分で治せねぇのか？」
「治せますよ？」
「は……？」
ぴたっと轟の動きが止まる。
Aを見下ろして、少し低い声で尋ねる。
「……じゃあ、なぜ治さねぇんだ」
「だからこれは自分への戒めだって……」
「何が戒めだっ、火傷の跡が残ったらどうする！？」
「え……っ」
大きな声に驚いて見上げれば、つり上げられた瞳と左側に広がる火傷の跡が目に入った。
整った顔に不釣り合いな“それ”からAはバツが悪そうに目をそらした。
「すぐ治せ」
「え？」
「いいから。包帯とるぞ……」
「ま、待ってくださいっ」
包帯をとろうとする轟の手を掴んで制止を求める。
「わ、分かりましたっ。ちゃんと治しますから……その、あまり目に触れて気持ちのいいものではないので……」
「俺は気にしない」
「包帯をとらなくても治せますからっ」
「……分かった」
必死に説得すれば轟は包帯から手を離した。
しかし手首を掴んでいる手は離れない。
「あ、あの……」
「なんだ？」
「手を、離してもらえませんか？」
いつまでたっても解放される気配のない左手を己の方へ引くが、掴む轟の手も一緒についてくる。
「このまま治せば良いじゃねぇか」
轟は意地でも離すつもりはないらしい。
Aが一歩下がっても、轟は足を踏み出して距離は変わらなかった。
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moeka(プロフ) - こちらの続編と轟兄妹との絡みを希望します。ぜひ検討して下さると嬉しいです。楽しみに待ってます。 (2021年6月28日 22時) (
レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
silver - どっちも好きですが、こっちが好き！ 続編を希望します！ (2020年11月7日 15時) (レス) id: 0515bcf5a2 (このIDを非表示/違反報告)
麗奈(プロフ) - 私はどちらかと言えば癒月ちゃんの話の方が好きです。こちらの続編を希望します！ (2020年3月23日 5時) (レス) id: acabdf4bd5 (このIDを非表示/違反報告)
ヨシ - 爆豪の方も、こちらの話も、好きです！更新頑張ってください！ (2018年12月5日 21時) (レス) id: 26236bbcfc (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ(プロフ) - 私癒月ちゃんの方が好きかもです。 是非続編希望します。この作品が、シリーズの中で一番好きです！ (2018年11月11日 0時) (レス) id: 949b3c86b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年7月21日 1時
