無色透明

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さっきまで動けなかったのが嘘みたいに走れる

後ろから呼び止める声が聞こえるけどそのまま走り続けた



急に逃げ出すなんて失礼な奴だと思われているかもしれない
でも顔を合わせて話すなんて私には無理だった。
どんなことを言われるのか怖くて、目も合わせることができない



息が苦しい…
足の速さには自信があったのに思ったように
動かなくて上手く走れない


このままだと追いつかれてしまう
急いで隠れる場所を探したけど
そうしている間にすぐに捕まってしまった






「…何で逃げんの」


普段温厚なてつやから聞こえる怒っているような
声色に背筋が伸びる



何も言えずに黙っていると今度は落ち着いた声で
優しく話しかける




「俺、ずっとAに会いたかったんだけど」




…何、それ
そんなの私だって同じ気持ちだ



だけど会えただけでもう十分…
今ならまだ引き返せる。
きっと皆のことも忘れられるはずだから





「もう…関わらないで」



その声は思っていたより弱々しく小さかった


しばらくの沈黙が続いたあと恐る恐るてつやの方を見る


勝手なことばかり言って怒られるかと思ってたけど、違った



「…ほんと変わんないねぇ、君は」



頭をぽんと優しく撫でられる



「そんな嘘すぐに分かるって。何年一緒にいたと思ってんの」




その瞬間、目に涙が溜まって溢れ出しそうになる



そうだ。私はずっとこの手を求めていたんだ…

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