無色透明

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「ねぇとしみつ、ちょっと離れ…」



その時

ドアが開いて白衣を着た中年の医師がやってきた

きっとあの看護師さんが呼んできてくれたのだろう




運悪く、抱き合っている姿を見られて慌てて離れる







医師は目線を逸らし大きく咳払いをしながら
こちらにやってくる。




「体調はどうですか？」



「え？あ…大丈夫です」



「そうですか…ここに運ばれてきて一ヶ月ほど
意識がなかったので心配していました」




…一ヶ月？


その言葉の意味が一瞬分からなくて、ぽかんと口を開けて間抜けな顔になる




「えぇ！？私、一ヶ月も意識なかったんですか！？」



あれから長くても三日くらい眠ってたのかなと
思っていたのに、まさか月を越していたなんて…



「これからいろいろと検査したいこともありますので、またしばらくは入院してもらうことになります」



「…分かりました」




「では、私はこれで。何かあったらすぐに教えてくださいね」



ぺこりと頭を下げて病室から出ていく


何だか人柄の良さそうな先生だったなぁ



「…ねぇ、としみつさ」



「ん？」



「知ってるんでしょ。私の病気のこと」



まさか私からその話をされると思わなかったのか、
明らかに動揺していた



















「こんなことになるなら…帰ってこなければよかった」



そんな言葉が無意識のうちに口からこぼれる


元はと言えば私はこの病気を隠すために
皆との別れを決断したんだ


バレてしまったのなら、今までのことは
何もかも全部無駄になってしまった




私が会いたいなんて思ったから



病室に重い空気が流れる中
ずっと黙っているとしみつの方を見れば
不意に目が合う









その瞳はどこか寂しそうな、悲しみの色をしていた

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