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Richard side
けっきょく俺がリクエストした、KinKi Kidsさんの『愛のかたまり』は却下された。
「冬になったら、誰かと一緒にライブでやりたい」らしい。誰とやるか決めるとき、めっちゃ揉めそうや。
たぶんAはもう、何を歌うか決めてるんやと思う。
末「何回も言うけど、“ラブソング”やからな！わかってる！？」
福「“友達”っていうところだけ拾って『友よ』とか歌わんとってや。それも聴きたいけど！」
「わかってますって〜。じゃあスタッフさんたちに明日話しときまーす！」
なんと、当日まで何を歌うか教えてくれへんらしい。このサプライズは、吉と出るか凶と出るか。選曲によっては何人か寝込むんちゃうか。
『名脇役』の練習をするために、6人で集まる機会が増えた。Aのことを想って歌ってるのに、Aがおらんかったらみんな調子がいい。ヘタレ集団や。
リ「なあ晶哉」
佐「はい？」
リ「この提案したほんまの理由はなんなん」
A以外で、と言うたときはいろいろ理由を話して見事にAを納得させたわけやけど、1番の理由はほかにあるはず。
佐「めちゃくちゃ私的な理由にはなるんですけど、俯瞰で俺らのことを見てほしいなって思って。少しでも届いてほしくなってしまったから、ですかね」
ほんまは、一生届かなくていいと思ってました。
そう言った晶哉は、いつものイタズラな笑顔やなかった。
ついに当日。
これまで、小島がスタッフさんに「あいつ何歌うんすか？」と探りを入れたり、末澤がAに「心配やし、俺にだけ教えてえや」と言ってみたりしても、Aが何を歌うのか、誰も口を割らなかった。
6人で歌う『名脇役』は、それはもう大成功で。ファンのみんなは最初こそAの不在に驚いた様子やったけど、曲が始まれば涙を流す子もいた。
うれしかったのは、何かを汲み取られたのかなんなのか、ペンライトが真っ白になったこと。もしかしたらスタッフさんの差し金かもしれんけど。
ステージから捌けると、Aは俺たちの顔を見るなり、「最高！」と言った。
やっぱりこいつには正攻法やないと、なんも届かへんのちゃうか？晶哉。
いつものパープルの衣装から白いミニドレスに着替えたAは、めちゃくちゃきれい。
コツコツ、とブーツの音を鳴らしながらステージに向かうAを見て、俺は自分の気持ちに気づいてしまった。
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作者名：リリー | 作成日時：2021年6月4日 19時
