手のなる方へ 6

259 ページ10

絶対に全てを明らかにしてやる
お前が相手にしているのは、こういう連中だ



「＿＿じゃあ、そういうワケで。全員、頼んだよぃ」


隊長会議で決まった内容をもう一度最後に確認してから解散の号令をかける
バラバラと会議室から去っていくのを見守っていると、するりと静かに寄ってきたのはイゾウだった


「杞憂であれば、と思ってたんだけどねェ」

「それで済めばよかったんだけどねぃ。そうもいかなくなってきちまったようだ。むしろ、もう緊急性が高いよぃ」

「あとはどの隊にいるか、って所か。まぁおおよその検討はついてるけどな」

「新米のみならず、恐らく古株も何人か混ざってるだろうねぃ。だが尻尾が掴めねぇ限りは糾弾することもできねぇ。厄介だな」

「気が緩んだ時にボロが出るさ。物事がうまく運んでる時ほど気は緩むモンさね。後はお嬢が厄介事に巻き込まれねェ事を祈るのみだ」

「…それが一番大変かもしれないねぃ」


新規で家族を迎え入れてから起きている不可思議現象
それは収まるどころか輪をかけるばかりで、それが段々と船内の空気を悪くしていた
その一番の問題と言うのが、“ Aに会えない”というもの
自由を謳う海賊の俺達が、Aに会えないという不自由だけでこんなにも揺さぶられてしまうなんて滑稽だと思う

だが実際問題、それは事実であり不調をきたす者が後を絶たない
船全体の士気に関わる、と緊急の隊長会議を行うまでの事態になってしまった


「もう夕方か…随分、時間食っちまったねぃ」

「うちのお姫ぃ様の一大事だからなぁ。サッチの美味い飯に期待でもするかね」


会議を始めたのは確か昼前だったか
今はもう夕陽が傾き、ソレはゆっくりと海に落ちていっていた
Aを探そうと思ったが、連日の事で結局会えない事は確実だ
俺達が会えないだけで、リナは毎日会っているようだし夜更けにはエースの部屋を訪れる、という報告も受けている
とりあえずは誰かしらがAの隣にいるならば“今”は安心だ


「…なぁ。検討つけてる隊ってぇのは」

「恐らく、お前さんと同じだ。ただ…主犯はソイツらじゃねぇ」

「は？」

「十中八九、“女”だ。いただろ？Aに敵意向けてるヤツが1人」

「…アイツか！」

「だがまだ憶測に過ぎねぇ。今は泳がせて、確実な証拠を掴むんだ」


脳裏に浮かんだ人物に、イゾウも同じように眉間に皺を寄せている
“確実に仕留める”と、その瞳が語っていた

＿＿狙った獲物は、逃がさねぇ

260→←258

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す