手のなる方へ 6

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「……アンタ…」



下げた頭の上
いくばくかの沈黙を破ったのはベイさんだった

誠心誠意、ってヤツを示すやり方なんて思いつく限りコレしかない
認めてもらって、この船に居続けるためなら頭を下げる事なんて大した事じゃない

それだけ、ここの皆が好きだという事だから




「……顔、上げろ」

「え…？」


聞こえたのは、予想外の声
思わず顔を上げると、そこにはどこか気まずそうな表情をしたスクアードさんがいた


「……あの、」

「別に…そこまでやれとは言ってない」


淡々と告げられる言葉
抑揚のない言い回しに、彼の機嫌を損ねてしまったと瞬時に理解した
慌てて離してしまっていた手を再び甲板へとつけようとした所で、グッとその手を掴まれる
反射的に前を向けば、今度は眉間に深く皺を寄せてしまっている彼と目が合った


「ッ、ごめ「違う。謝ってほしいワケでも、態度で示してほしいワケでもねぇ」


謝罪の言葉を口にしようとすれば、遮られる
ではどうすれば、と困り果てて私は眉尻を下げるばかり

どうすれば、何をすれば彼に認めてもらえるのか


＿＿分からない






「スクアード。アンタ、言葉が足らなすぎるのよ」


降ってきた言葉はベイさんのもの
どういう意味かと視線を向ければ、“困ったヤツだわ”と半ば呆れたような表情をしたベイさんと目が合った
次いでスクアードさんに目を向ければ、深く溜息をこぼした後にポツリポツリと語り出した


「……異論はねぇ。別に、アンタがこの船に乗る事に反対してるワケじゃねぇ。親父が信じたヤツを信じてないんじゃなくて、だな。
嫌いとかじゃなくて…その、つまりだな…」

「ったく！さっさと言いなさいよ！普段の威勢はどこに行ったのさ！！」

「うるせぇ！どう言やいいのかも、どう接すりゃいいのかも、こっちは分かんねぇんだよ！！
ベイはともかく、コイツは若いだろ！？
俺ぁどうコイツと接すればいいか、分かんねぇんだよ！！」

「え…、」


吐き出された言葉は予想を大きく外した
てっきりスクアードさんは私の事をよく思っていなくて、この船に乗るには相応しくないと

そう、考えていると思ったのに



「……私、ココにいて、いいんですか…？」

「ッ、当たり前だろう！？誰が認めてねぇと言った！」

「ッ！！」


力強い言葉に、堪らず涙腺は崩壊した
その瞬間にスクアードさんは焦り出して、その場がとんでもなく修羅場化してしまったけれど

私の涙は、嬉し涙へと変わっていたんだ

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