手のなる方へ 6

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＿＿聞いてたのと、違う



「…ねぇ？リン姉」

「なぁにAちゃん」

「私が聞いてた話とだいぶ状況が違う気がするんだけど気のせい？」


体調に波が起きることもなく、リナ姉の許可がおりてリン姉と共に甲板に来たところまでは良かった
宴をするって言ってたから、呑んだくれだらけになっているって事も予測してた

でも、それにしたって




「……なんか、多くない？」


イゾウ兄は“大渦蜘蛛海賊団”だと言っていた
それらしき船がモビーの隣にあるのは分かる

＿＿が、何ゆえその隣に見知らぬ船がいるのだろうか


「大渦蜘蛛海賊団は2隻で行動してるの？」



その問いは大騒ぎの甲板に響くことなく消える
リン姉も呼ばれてしまって行ってしまったので、文字通り1人きり
そこは大して問題ではないが、アウェイ感が半端ない
酔っ払いの中にテンション高く混ざっていくのは、どう考えても今の気分じゃない




「……あれ、A来てんじゃん！呼びに行こうと思ってたんだよー！」



さてどうしたものか、と物陰から伺っているとハルタ兄の声が響く
響いたと同時、その周辺にいたクルーや隊長格が勢いよくこちらを向いたモンだから、さすがにビビって変な声が出た


「ひぃ！？」

「お！Aじゃん！！やっと出てこれたか！」

「うおー！なんかめちゃくちゃ久しぶりじゃねぇ！？どこかのおとぎ話の眠り姫みてぇだな！」

「もう万全なのか？快気祝いに飲もうぜ！」

「…や、ちょっと待っ、！？」



あれよあれよという間にクルーの皆に囲まれ質問責めやらなんやらかんやら
待っててくれたことが嬉しいと思う反面、体調は戻りきってないし下手に動けないし対処に困れば困るほど、クルーの皆は世話を焼いてくれようとさらに集まってくる

待って待って、カオス過ぎる


「…おいおい。Aはまだ万全じゃねぇ。お前らがそんな寄ってたかって困ってるのが証拠だろぃ」

「マルコ兄！」


ひょい、という効果音がつきそうなほどあっさりと後ろから抱えられ、驚いてそちらを見れば呆れ顔のマルコ兄


散った散った、と言うように手を払うと、クルーの皆は残念そうな表情を浮かべながら去っていく
申し訳ないと思いつつも、マルコ兄に抱えられて連れてこられたのは一際目立つ輪の中
ドカリと座ると共に私はマルコ兄の横に強制的に座らされた

そこにいたのは


傍らに巨大な刀剣を携えた、長髪で額に蜘蛛のタトゥーを入れた人物と
同じく水色の長髪を靡かせた、勝気な目元の女性だった

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