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「A」
「え…あ、リナ姉!」
呼ばれた声に顔をあげれば、そこには大きめのグラスを2つ持ったリナ姉が立っていた
処理途中の書類を本に挟んで、膝の上の机を畳むとリナ姉は私の横へと座る
差し出されたのはフルーツをたくさん使った、私の大好きなジュースだ
「サッチ兄のジュース!なんでリナ姉が?」
「サッチ隊長に頼まれたのよ。“俺が持ってっても多分Aが見つからねぇから確実に会える人が持ってってくれ”、ですって。
…相変わらず、みたいね?」
「はは…ホント、意味分かんないよね」
苦笑いを浮かべながら受け取ると、久しぶりのその香りに鼻腔が擽られる
一口口に含めば、ほぅとため息が漏れた
「最近、根詰めすぎじゃない?ちゃんと寝られてる?」
「うん…まぁ、ぼちぼち」
「ウソね」
即座に否定されて思わず目を見開きながらリナ姉を見やる
そっと触れたリナ姉の指がゆっくりと目元をなぞった
「せっかくちょっと薄くなってきていたのに…振り出しね。私の目は誤魔化せないわよ?」
「………ゴメン」
長くなった睡眠時間も
深くなった睡眠の質も
気が付いたらあっという間に元に戻ってしまっていた
否、理由は分かっている
「…せっかく“当たり前”になった日常が崩されれば、不安定にもなるわよね」
“謝る事じゃないわ”と困ったようにリナ姉は笑って、私の頰から手を離す
こんなに自分は弱かったっけ?と疑問になるほど、今の私は精神が不安定だ
それを誤魔化すように、何も考えないようにと仕事量を増やせば、それがまた睡眠障害に拍車をかけてしまったようだ
「やだなぁ…ホント、皆に依存しまくりじゃんね」
「あら、兄達からしたら本望なんじゃないかしら。甘えてもらえてるって証拠でしょう?」
「構ってもらえないのがこんなに苦痛なんて思わなかった」
「あら素直」
“いい傾向だわ”と今度は満足そうに笑うリナ姉に苦笑いを浮かべるしかない
そんな私を尻目に美味しそうにストローに口をつけていたリナ姉が、突然ピタリと動きを止めた
「リナ姉?どしたの?」
「A…あなた、隊長格の人達とは会えないのよね?」
「え?あー…うん。そうだけど、全員にかって言われたら違うかな。
あんま寝られないにしてもエースの所に行くのは日課になっちゃってるし、ジョズ兄やラク兄なんかはちょいちょい会うよ?」
リナ姉の質問の真意が分からない
なにやら難しい顔をして考え込むリナ姉に、私へ首を傾げる事しかできなかった
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茉南(プロフ) - はるさん» 読んでいただきありがとうございます!更新を待っていただける事、とても嬉しいです(^^)のんびりし過ぎて忘れられないよう頑張っていきたいと思っています(笑)これからもよろしくお願いします! (2月15日 11時) (レス) @page49 id: 6c919d248d (このIDを非表示/違反報告)
はる - やば、めっちゃ最高…!!ゆっくりでいいので更新待ってます‼ (2月15日 10時) (レス) id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)
茉南(プロフ) - 雨衣さん» いつもありがとうございます(^^)そうなんですよー!原作はみんないなくなってて寂しくて(T-T)彼らを今後どうするか、ある程度考えているのですが…今が楽しくて悩み中です(笑)今後も楽しんでいただけたら嬉しいです! (12月28日 0時) (レス) id: 936b383323 (このIDを非表示/違反報告)
雨衣(プロフ) - 毎週本当楽しみにしてます!アニメではサッチもイゾウ達もらいなくなるので寂しいんですけど手のなる方へではみんないるから本当癒しになります!!今後の展開が楽しみです! (12月27日 21時) (レス) @page44 id: ab81a6b8c3 (このIDを非表示/違反報告)
茉南(プロフ) - れなさん» 読んでいただきありがとうございます!文章を褒めていただき、昇天しそうです…。ちまちま書き進めていますので、のんびり待っていただけると嬉しいです(^^)これからもよろしくお願いします! (12月19日 23時) (レス) id: a9242dc9a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉南 | 作成日時:2023年3月3日 11時