【募集企画】加護の子、神の子【小説】

story24【久瀬 呂十】 ページ25

近くで声がするような気がする。

高い壁の様に聳え立つ影。

浴びせられる罵声と暴行。

顔が黒く塗り潰されさた人物。

はて､誰だっただろうか＿＿＿＿


嗚呼､苦い夢を見た。


堕ちていた意識を慌てて引き戻し眼を擦る。

眼元に触れれ温かい液体が指先へと伝わった。

濡れたワイシャツでその液体を拭う。

特に意味を成していないと思うが

人の声が聞こえた事を思い出し

まだフィルターの掛かっている視界を必死に

合わせようとする。

漸く視界を合わせる事が出来たなら

其処には 数人の人影があった。


『ｯあ…』


迂闊だった。

この結晶を見られたならば

どう思われてしまうだろうか

内心 もうどうでもいい と諦めの色を見せて

はっきりと見える様になった人影に

寄り掛かったままこう言った。


『何か 御用はあります？』


呂十自身はそう聞くのが妥当だと思ったのか

そう言えば ゆっくりと立ち上がった。

自身の自己紹介を忘れていた事を思い出し

先ずは自分から名乗らなければと

自身の事を簡単に紹介をする


『僕は 久瀬 呂十 です。…一応 男ですよ』


先程見た短い夢の余韻が尾を引いていたのか

少しばかり曇った笑みで呂十はそう言った。

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