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#35 ページ5

「眠い?」

帰宅ラッシュにはまだ早い時間。
夕方の鈍行は人もまばらで。
ガタンゴトンと規則的なリズムが眠気を誘う。
水族館の最寄りから数駅で、俺も神ちゃんもだんだん口数が減ってきた。

「ん…」

俺よりも一段と眠そうな神ちゃんは、聞いているのかいないのか微妙な返事。
休みといっても、真面目な彼だからどこかで気を張っている部分もあるんやろな。
慢性的な寝不足は解消されていないみたい。
…ゲームやってた可能性もあるけど。

「しげ…」
「はーい?」
「俺な、もう描けるで」

寝落ちる数秒前の声やのに、やけにその言葉は説得力があって。

「そっか」

俺の相槌にそれ以上の返事は返ってこなかった。





頭の支えが突然なくなる感覚で目が覚めた。

「しげ、そろそろやで」

気づいたら俺も寝てたらしい。
ポヤポヤとした意識の中、傾けていて痛む首を回す。
…ん?傾けて、た?

「ごめん、神ちゃんに寄っかかって寝てもうた!?」

神ちゃん先に寝たし、てか俺の肩で寝てたし、大丈夫やと思ってたんやけど。
(神ちゃんの温もりを肩に感じる緊張で眠れないと思ってた。のに寝てた。恐ろしい。)

「んーお互い様やから大丈夫」

あ、見る?
そう言って彼が差し出したスマホには、カップルのようにもたれあう二人の姿。
神ちゃんはバッチリ目を開けて、可愛くピースも決めてる。
…俺は完全に寝てる。
何ならちょっと口が開いててマヌケ面。

「…これはだいぶ…」
「おん。人少なくて良かったなぁ」

バカップルやと思われるで、と神ちゃんは俺が濁したその言葉を容赦なく放つ。

「その写真送ってやぁ」
「まじで?笑」

要らんやろ、と言う神ちゃんはきっと気づいてない。
これが初めてのツーショットなこと、俺のカメラフォルダにはまだ一枚も神ちゃんの写真がないこと。

写真が送られてくるのと、駅への到着を告げるアナウンスが流れたのは同時やった。

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ナナセ(プロフ) - ゆさん» 夜分遅くの返信ですみません。コメントありがとうございます◎ スピンオフも前向きに検討いたします。次回作もお付き合いいただければ幸いです。 (2020年12月16日 1時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 完結おめでとうございます!大好きな作品で、要所要所できゅんが止まりませんでした。上手く言えませんが、本当に最高です…この物語の続きやサブメンバーのスピンオフ的なものも気になりますが、次回作も楽しみにしております。 (2020年12月15日 23時) (レス) id: c2197c2c66 (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - niciさん» コメントありがとうございます。実は両片思いの二人でした…◎ 両片思いという設定を前提に書き進めていたので読み返していただけて嬉しいです! (2020年12月9日 13時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
nici(プロフ) - ナナセさん、素敵なお話をありがとうございます*キュンキュンしながら、ほんわか温かな気持ちになれるストーリーに出会えて幸せです。番外編で緑くんの恋心を知り、それを踏まえてもう一度最初から読み直してみたら2人とも可愛くて鼻血出ちゃいます!笑 感謝を込めて。 (2020年12月9日 12時) (レス) id: ade73ad07d (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - suu1_____9ndさん» コメントありがとうございます。私も自分で書いておいて終わってしまうのが寂しいです笑 あまり長くはありませんが楽しんでいただけましたら嬉しいです◎ (2020年12月8日 13時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナナセ | 作成日時:2020年11月25日 10時

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