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#43 ページ13

「なぁ、そんなん俺、期待してまうよ」

淳太さんはそう言って、神ちゃんの頬に手を添える。

「、ちょっと…」

その近い距離に、神ちゃんは戸惑ったように声を上げる。

「ずっと、ずーっと、とものこと好きやって伝えてきたつもりやで。俺が日本発つ時なんて言ったか、覚えてるやろ?」

こくり、と音もなく彼は頷く。

「良い加減、俺のこと王子様やって認めてくれてもええんちゃう?」
「……」

黙ってしまった神ちゃんに、淳太さんは悲しげにため息をつく。

「困らせるようなことはしなくない。やけど、俺、ほんまにとものこと好きやから…絶対、幸せにするから…」

彼はサラサラとメモに文字を綴る。

「異動になってん。来週からは日本で働く。家も借りた」

これ、住所な。
書かれた文字列は、ここからそう遠くない場所を指していて。

「一人にして寂しい思いもさせへん。…前向きに、考えてくれると嬉しい」

そう言って、淳太さんは席を立つ。

「連絡、待ってるから」





ドアの閉まる音と同時に、中途半端に立ち上がっていた神ちゃんは力なく椅子に座り込んだ。

「…大丈夫?」
「ん…」

今彼は何を考えているんやろ。
淳太さんに負けないくらい悲しげな顔は、二人の過去に何かあったことを容易に想像させる。

「幼馴染で、お兄ちゃんみたいな存在やった」

ぽつりと彼は言葉をこぼす。
相槌を打つと、ハッとしたように座って、と促されて。

「自分で言うのもおかしいけど、ほんまに漫画みたいな関係でさ」

どうして知り合ったのかは思い出せないけど、小さな頃からずっと優しく面倒を見てくれて。
かっこよくて、頭も良くて、友達も多くて。
家もすんごい大きいんやで。
神ちゃんは困ったように笑う。

「小さい頃は、淳太と結婚するってよう言ってたらしい」

あまりにもすぎるセリフに、二人して苦笑いしてしまう。

「ほんまもんの王子様みたいやな」
「少なくとも、小さい頃はそう思ってた。…今も、キラキラして王子様みたいなのは否定せぇへんけど」

でもやっぱり違うんや、と悲しげに笑う姿を見て、何だか心が強く揺れた。

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ナナセ(プロフ) - ゆさん» 夜分遅くの返信ですみません。コメントありがとうございます◎ スピンオフも前向きに検討いたします。次回作もお付き合いいただければ幸いです。 (2020年12月16日 1時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 完結おめでとうございます!大好きな作品で、要所要所できゅんが止まりませんでした。上手く言えませんが、本当に最高です…この物語の続きやサブメンバーのスピンオフ的なものも気になりますが、次回作も楽しみにしております。 (2020年12月15日 23時) (レス) id: c2197c2c66 (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - niciさん» コメントありがとうございます。実は両片思いの二人でした…◎ 両片思いという設定を前提に書き進めていたので読み返していただけて嬉しいです! (2020年12月9日 13時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
nici(プロフ) - ナナセさん、素敵なお話をありがとうございます*キュンキュンしながら、ほんわか温かな気持ちになれるストーリーに出会えて幸せです。番外編で緑くんの恋心を知り、それを踏まえてもう一度最初から読み直してみたら2人とも可愛くて鼻血出ちゃいます!笑 感謝を込めて。 (2020年12月9日 12時) (レス) id: ade73ad07d (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - suu1_____9ndさん» コメントありがとうございます。私も自分で書いておいて終わってしまうのが寂しいです笑 あまり長くはありませんが楽しんでいただけましたら嬉しいです◎ (2020年12月8日 13時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナナセ | 作成日時:2020年11月25日 10時

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