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流星、歌上手かったなぁ。
駅から家までの道、イヤホンから流れてくるのはさっき流星が歌っていたバラード。
流星の低く響く声が思い出される。
「俺も音域広げてぇ〜!」
人がいないのをいいことに、小声で呟いてみたりして。笑
思いを言葉にして、カラオケを大声で歌ったら、モヤモヤはだいぶ小さくなった。
ずっと前からしげのことが好きなんやもん。
もう、それは認めざるを得ないし、忘れることもできない事実。
うまく気持ちに折り合いをつけて。
しんどくなったら立ち止まって。
ずっと幼馴染の立ち位置で居続けるしか、ないから。
「…あれ、しげ?」
「神ちゃん…!もう、どこ行ってたんや!」
「あ、えと…ちょっと、そこまで」
俺ん家の門扉の真ん前に立っていたしげは、俺を見つけるなりほっとした表情になる。
長いこと待っててくれたんやろか、俺の家に寄りかかった形でブレザーにシワが入ってる。
「様子おかしかったから心配しててん。…今日、おかん遅いしさ、うち来ぉへん?話聞くで」
「俺おかしかった?」
「うん。表情暗かったし。無意識?」
ほら、って、俺の家からしげの家までのほんのわずかの距離でも差し伸ばされる手。
好きを忘れるのは、どうしてこんなにも難しいんやろ。
・
「ほい、麦茶。お菓子…は、今食べたら夕飯食べれんくなるな」
「しげなのにちゃんとしたこと言う。笑」
「失礼やでそれ!」
ぼふん、と俺の横に腰掛けたしげの体重で、少ししげの方に身体が寄る。
彼の部屋ではベッドをソファ代わりに、隣り合って座るのが定位置。
「カラオケ?」
「へ?」
「や、タバコの匂いするから」
「そう。ごめん、換気してもらって良い?」
「んーん。何か珍しい匂いして、これはこれで好き」
「何やねんそれ。笑」
スン、と服の匂いを嗅がれただけで頬が熱くなるのがわかる。
「しばらく行ってへんよな。今度一緒行ってやぁ」
「行こ行こ。…あ、ドリンクバーで遊ぶの禁止な」
「え、トマトジュースとメロンソーダ、混ぜたあかんの?」
「絶対あかん!」
ぽんぽんと弾む会話。
ああ、しげのこういうところは一週間、ずーっと一緒や。
波長が合うというか。
黙ってても苦じゃないのは当たり前やけど、話はじめたら止まらへんの。
そんで、結局笑顔になってまう。
「やっぱり俺、神ちゃんのこと好きになって良かったなぁ」
「、どしたん急に」
「でも神ちゃんも同じこと思ってたやろ?」
わかんねん、そういうの。
その言葉は本当にすごく、間近に聴こえて。
「しげ…?」
少しだけかさついたしげの唇が、俺の唇に触れた。
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ナナセ(プロフ) - かこさん» コメントありがとうございます◎ ぜひ次回作もお付き合いください!! (2021年2月19日 13時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - 完結おめでとうございます( ; ; )とっても面白かったです!次回作も楽しみにしてます(^^) (2021年2月19日 12時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナナセ | 作成日時:2021年2月2日 10時