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#55 ページ15

「かぁみちゃん、」

ポン、と肩を叩かれて振り返る。
そこにはノートを抱えたしげの姿。

「教室で待っててくれて良かったのに」
「んー?結構大変やろ。手伝うで」

悲しいことに、テスト最終日に日直が回ってきてしまった俺は今、大量の提出物と格闘している。

「ありがと」

二往復目で、と思って教卓に置いてきた現代文のノートたちはしげが持ってきてくれた。
職員室行くのはこの一回で済みそう。ありがたい。

「部屋割り、ごめんな。勝手なこと言って」
「ううん。誰とでも楽しいやろし、全然」

そういや、昔はよくお互いの家に泊まりに行ってたのにいつしかその文化もなくなってもうたな。

「…俺は、神ちゃんと泊まりたくて」
「うん?」
「神ちゃんが、いいの」

それだけ言い残すと、しげの歩くスピードがぐんと上がった。

「え、ちょ、待って」

それは考える隙を与えたくないという彼の意思表示な気がして。
都合よく考えたくなってしまう思考を止める。

「今から言うことは、明日になったら忘れてほしいんやけど。」

振り返ったしげを夕日がぼんやりと照らす。

「最近の神ちゃん、流星と仲が良くて嫉妬する」

泣き笑いみたいな表情。

「別に俺、神ちゃんの何でもないのに。ただの、幼馴染なのに。ごめんな」

何か言ったら、変わるんやろか。
今、俺が正しい受け答えをしたら、しげと付き合うことができる?

「っ、俺は、」

遮ったのはチャイムの音。
完全下校時刻10分前。帰宅を急かす先生の声が遠くに聞こえる。
その喧騒にハッとしたように、しげは話を逸らしてしまう。

「…早よ提出して、戻ろっか。二人とも待ってる」

しげの言葉に曖昧に頷いて、少し後ろを歩く。
明日になったら忘れてなんてわがまま、やめてほしい。
俺だけが火曜日のお前のことも覚えてて、振り回されてるのに。

「しげ。俺もさっきのこと、明日になったら忘れるから、俺の言うことも忘れてな?」

小さく深呼吸をする。

「俺は、しげのこと幼馴染以上の存在やと思ってる」
「っ、」
「はい、とっとと職員室行くで」

目には目を、歯には歯を、…わがままには、わがままを。

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ナナセ(プロフ) - かこさん» コメントありがとうございます◎ ぜひ次回作もお付き合いください!! (2021年2月19日 13時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - 完結おめでとうございます( ; ; )とっても面白かったです!次回作も楽しみにしてます(^^) (2021年2月19日 12時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナナセ | 作成日時:2021年2月2日 10時

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