#52 ページ12
「あぁー…そろそろ勉強せなあかんよな」
しげは大きく伸びをしながら、不満げにそんな言葉を吐く。
きっかりテストの一週間前になって、今日から部活動も停止。
やっと本腰を入れるかと思ったけど、彼は未だ机に突っ伏したまま。
「神ちゃぁん、図書室で勉強せぇへん？」
「それ、俺やなくて俺のノート目当てやろ」
「ん？そんなことないで」
「じゃあノート見せへんからな」
「それはちゃうやん！」
しげはびっくりするほどいつも通りで。いや、当たり前なんやけど。
…昨日のキスを覚えているのは俺だけ。
「神ちゃん？」
「へ？」
「聞いてた？なぁ俺も得意科目は神ちゃんに協力するからさ、頼むでほんま」
ほら、と無理矢理椅子から引っ張り上げられて、慌ててリュックを取る。
「のんちゃんと流星は？」
「ん？ええって。あいつらもあいつらで勉強するやろ」
何その急に冷たい判断。
「たまには俺と二人きりもええやん？」
「何言ってんねん、あほ」
毎日駅と家の往復を二人でしてるやつが言うか！
・
「…神ちゃん、ここ寝てたやろ」
「へ？…ほんまや。ごめん」
結局貸し出した日本史のノートに、まさかのケチを付けられた。
「でもなぁ、ここは俺書いててん。俺らデコとボコが上手くハマってるわ」
ここな。1915年。
そう言ってちょっと得意げなしげ。
いや、なんか、うん。ありがたいけど、ちょっとむかつく。
「…大学とかさ、何か考えてるん？」
「どしたん、急に」
「いや…上京するやつと地元に残るやつ、居るやろ？この間見てもうてん。小瀧が先生から東京の大学のパンフもらってるところ」
勉強に集中しろ、とは言いにくい。
俺ものんちゃんのことは初耳やったし、心のどこかで気になってた。
「…まぁ、まだ二年生やからな。視野は広くっていう気持ちもあるんやない？」
「神ちゃんは？どう思ってんの？」
「俺は…んー、何も考えてへん。指定校はちょっと考えてるけど」
生まれた時からずっと隣にいたしげも、もしかしたら後一年ちょっとで遠い存在になってしまうのかもしれないのか。
急に突きつけられた現実に、心の中で動揺する。
「そか…」
「でもまずは、目の前のテストちゃうん？手が止まってますよ」
ツン、と彼の拳をつついた指が絡め取られる。
「神ちゃん。何も言わんで、遠くに行くのはなしやで」
人差し指同士で無理矢理指切りしようとするから。
組み直すべく、俺からしげの小指に手を伸ばした。
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ナナセ(プロフ) - かこさん» コメントありがとうございます◎ ぜひ次回作もお付き合いください！！ (2021年2月19日 13時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - 完結おめでとうございます（ ; ; ）とっても面白かったです！次回作も楽しみにしてます(^^) (2021年2月19日 12時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2021年2月2日 10時
