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連絡先は知っていたけれど、ロボロ君が学校に来なかった間、連絡のひとつも寄越さなかった。理由はひとつだ。追い詰めたくなかったから。
ロボロ君は自身の自宅に私を呼び出した。放課後、掃除当番をサボった私は早歩きで向かう。何だか、嫌な予感がしたのだ。
「 やっほー、ロボロ君。私だけど。A。 」
インターホンを押したが応答はない。玄関のドアを容赦なく叩く。だが、反応はない。人を呼んでおいで応答がないなんて何事だろう。
家の裏に回ると、リビングの窓の鍵が開いていた。礼儀としてローファーを脱ぎ、靴下で家に入る。勝手に家に入るのは礼儀知らずかもしれないが、失礼します。
「 ロボロ君ー。私だよー、来たけど。おーい。 」
ご両親がこの時間、仕事で家を空けているのは知っていた。また、ロボロ君はひとりっ子だ。今、家にいるのはロボロ君だけな筈。私の勘で階段を上り、2階を目指す。子供部屋って大体、2階にあるんだよね。私もそうだったし。
「 ロボロ君、おーい。 」
部屋のドアに掛けられた" よう "のプレート。ロボロ君は陽( ヨウ )君と言う。何で皆がロボロと呼ぶのかは知らない。ニックネームって案外、適当だよね。何回かノックしたけど、返事がなかったから、勝手にドアを開けた。
そうしたら、ベットの上で綺麗に横になっているロボロ君が居る。寝ているのかと思って近付いて気付く。寝てない、死んでる。でも、怖くなかった。何となく分かった。近くに散らばる錠剤と瓶。オーバードーズだろう。自 殺か。あまりにも綺麗な顔をしていたので、本当に寝ているだけかと思ったけど、脈がない。
ご両親が帰宅して、ロボロ君の遺体に気付くのは何時だろう。流石に腐敗する事はないかもしれないけど、こんな綺麗な状態でロボロ君と会えたのはラッキーだ。人の遺体を見てラッキーだなんて場違いだが、ぐちゃぐちゃになったロボロ君は見たくない。
部屋を軽く見た。証拠を残すと面倒臭いから、あまり、物には触らなかった。まあ、自 殺と判断されて捜査はされないだろうけど、一応。特に遺書らしき物はない。日記でも見つかれば、自 殺と断定されるだろう。
最後に1度、ロボロ君の唇にキスをした。冷たくて、やっぱり死んでるんだと再確認。これはファースト・キス。恐らく、ロボロ君にとって。このキスに重みはない。価値もない。何たって、相手は死んでるんだから。
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紗枝(プロフ) - ちびさん» こんばんわ。温かいコメント有難う御座います。本当に嬉しいです☺ " はくしき "とても思い入れのある作品です。そんな風に言って下さって、光栄に思います。これからも度々、覗きに来てくれると嬉しいです💐 (5月30日 3時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
ちび - この短編集から貴方様の事を知りました。とても文が好きで文字の使い方が好きです。とくに「はくしき」が何か胸にもやっとくるような不思議な気持ちになりましたとても好きです😢✨これからも応援してます。 (5月29日 21時) (レス) id: b1c4d4a663 (このIDを非表示/違反報告)
紗枝(プロフ) - 大神さん» こんばんわ。通知に紛れてしまい、反応が遅くなってしまいました。申し訳御座いません。お優しい言葉、言葉にならないくらい嬉しいです😊 これからも見守って下さると嬉しいです🥰🥰 (5月21日 22時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
大神(プロフ) - zmさんの小説を読んでから全ての作品を読ませて頂きました。どの作品も心に刺さりましたが、この短編集が特に好きです。こんなに自分好みの小説を書かれる方に初めて出会い、言葉にならないくらい好きです。これから応援しております。 (5月20日 12時) (レス) @page37 id: 48f5acd833 (このIDを非表示/違反報告)
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