✍ さようなら ページ49
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〔 さようなら ⇨ 鬱先生 〕
普段はインドアな僕ですが、随分昔に旅行に行った事があります。具体的な名前を出すのは控えますが、豊かな自然にとても癒されました。是非、もう1度行きたいと思う位の場所でしたが、その中でも有名な観光地に行った事があります。どんな場所かと言われたら、これもまた具体的な名前は出しませんが、水のある場所で、夏に行ったのに涼しくて驚きました。
其処は、大勢の殉職者を出して建設された場所で、歴史も長く、今年で60年程になるそうです。大人になると学ぶ機会が減る為、貴重な機会でした。社会に出て一心不乱に働いていると、物事に対する興味って減っていきますよね。と、言うのも、興味を持っても行動に移せない事なんて大人の常識なので、僕も様々な事に手を出そうとして、飽き性なのを思い出し止めました。
水の流れを見ながら、呼吸を整えていると、背後から足音がしたので振り向きました。すると、若い女性が取り乱した様な様子で此方にやって来て、掠れた声で言うのです。
「 助けて下さい…… 」
その言葉を聞いた時、鳥肌が立ちました。今まで生きて来た中で、こんなに推測したくなる言葉は聞いた事ありません。彼女が何かの事件に巻き込まれている事は明白でした。
「 どうしましたか? 」
僕がそう訪ねると、彼女は浅い呼吸を繰り返しながら、拙い言葉を続けました。
「 友達と来てたんですけど……知らない男の人達に連れて行かれて…… 」
「 え?知らない男の人達? 」
多少、覚悟していたつもりでした。ですが、彼女から出る言葉を信じたくなかったのです。こんなに美しい場所で、ひとつの事件が起きている。そして、彼女はその事件に巻き込まれた被害者。簡単に信じられないじゃないですか。僕だって最初はそうでしたよ。でも、信じるしかないじゃないですか。
「 今、友達は何処に? 」
「 分かりません……車に連れ込まれて、逃げて来たから……もう、遠い所に行ってしまったと思います…… 」
「 警察に相談しましょう。 」
僕がスマホをポケットから取り出した時、彼女はそれを反射的に跳ね除けました。僕のスマホが宙を舞います。そして、鈍い音を立てて落ちました。呆然とする僕に、彼女は半泣きになりながら説明します。
「 警察に追放したら、殺すって言われて…… 」
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紗枝(プロフ) - ちびさん» こんばんわ。温かいコメント有難う御座います。本当に嬉しいです☺ " はくしき "とても思い入れのある作品です。そんな風に言って下さって、光栄に思います。これからも度々、覗きに来てくれると嬉しいです💐 (5月30日 3時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
ちび - この短編集から貴方様の事を知りました。とても文が好きで文字の使い方が好きです。とくに「はくしき」が何か胸にもやっとくるような不思議な気持ちになりましたとても好きです😢✨これからも応援してます。 (5月29日 21時) (レス) id: b1c4d4a663 (このIDを非表示/違反報告)
紗枝(プロフ) - 大神さん» こんばんわ。通知に紛れてしまい、反応が遅くなってしまいました。申し訳御座いません。お優しい言葉、言葉にならないくらい嬉しいです😊 これからも見守って下さると嬉しいです🥰🥰 (5月21日 22時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
大神(プロフ) - zmさんの小説を読んでから全ての作品を読ませて頂きました。どの作品も心に刺さりましたが、この短編集が特に好きです。こんなに自分好みの小説を書かれる方に初めて出会い、言葉にならないくらい好きです。これから応援しております。 (5月20日 12時) (レス) @page37 id: 48f5acd833 (このIDを非表示/違反報告)
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