【 wrwrd! 】わたしがいちばん【 短編集 】

¦ ページ42

▶


　「 へえ、羨ましいな。俺も一緒に行っちゃおうかな。 」
　「 邪魔しないでよ。今度こそ、上手く行きそうなの。 」
　「 それ、前も言ってなかった？ 」
　「 エミさん、全然手出して来ないんだもん。私の事、女の子扱いしてくれるの、ロボロ君だけ。 」
　
　
　俺が同じ事務所に所属するアイドルのスキャンダルをAに売る。Aはそれをネタに記事を書く。そうすると、週刊誌の売上は上がる。スキャンダルを報じられたアイドルは、高確率で辞める。事務所の売上が下がる事を懸念し、俺等のグループの仕事が増える。俺は事務所の稼ぎ頭となり、莫大な金銭を稼ぐ。そして、あっさり芸能界を引退する。
　将来は台湾の台北で暮らすと決めている。理由は肌に合うからだ。
　
　
　「 次はどんなネタを持って来てくれるのかなー。私、楽しみにしてるね。 」
　
　
　語尾にハートが付きそうなAのご機嫌な台詞。柔らかい肌をなぞった。
　
　
　「 ロボロ君、君もか。 」
　
　
　アイドル人生初めて、俺の将来は見えなくなった。裏切り者が誰かは分かっている。
　
　
　「 ロボロ君の事は信じていたよ。うちの稼ぎ頭だし、海外でライブする予定だってあっただろう。それなのに、裏切られた気分だ。 」
　「 すいませんでした。 」
　
　
　つい、先日。俺とマイカの熱愛が報じられたのだ。マイカは、最近芸能界で人気に火が付いた女優で、来週には映画の公開も控えている。若い子からの支持を得ているマイカと付き合い出したのは、まだ最近だ。マイカと会う事も十分に気を付けていたつもりなのに、撮られた。誰に？あの女だ。
　
　
　「 今後、どうするんだ。イメージは下がったよ。こんな" 下品 "な記事を書かれてしまえば、ロボロ君は終わりだ。もう、アイドルとして生きていけない。 」
　
　
　下品な記事。俺とマイカのデートの様子や、交際に至るまでのエピソードと時間。そして、性行為。誰が密告したのか分からない情報が、全て載っていた。


　「 エーミール君とはもう話が付いている。ロボロ君が事務所を辞めるなら、自分も辞めると言っていたよ。ロボロ君の事を尊敬しているからね、エーミール君は。でも、可哀想だろう。ロボロ君のスキャンダルで、エーミール君も人生が奪われた。それについてはどう思ってるんだ？ 」
　
　
　▶

¦→←¦

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す