【 wrwrd! 】わたしがいちばん【 短編集 】

¦ ページ26

▶
　
　
　「 ひとりの女性が出産した人数の、ギネス記録は何人？……これは流石に重いか。じゃあ、吉原の遊女の信仰と関連のある動物は？……何か駄目な気がする。……エッフェル塔は気温によって最大何ｃｍ高さが変化する？……これか。これで行こう。エッフェル塔、何処にあるか分からないけど良いか。 」
　
　
　パタパタとショッピを追い掛ける。上履きで廊下を走ると、軽快感が凄い。楽しい。犬になったみたい。
　
　
　「 ごめんね、ショッピ君。私も、こんな事になるとは思ってなかったの。でも、ショッピ君も学校辞めたくないでしょ？だから、お願い。秘密にしておいて。ほら、私もお腹の子の為に職を失ったら困るもの。ショッピ君はお利口さんだから、分かるよね？ 」
　
　
　空いている数学教室で、関田とショッピは見詰め合っている。この間の車内とは大違い。葬式？何これ。本物のお遊戯会？
　
　
　「 あの人とはどうせ上手くいかないから。ほら、私がお見合い婚なの知ってるでしょ？私が本当に好きなのはショッピ君だけだよ。分かってくれるでしょ？ 」
　「 はい、分かってます…… 」
　「 お利口さんだね、ショッピ君は。これからもずっと一緒に居ようね。 」
　「 はい、ずっと一緒にいます……ずっと。 」
　
　
　ショッピの声がか細くなり、生気も無くなった。
　
　
　「 あれ、私、ショッピに何て言うんだっけ。 」
　
　
　ミルクセーキを食べる文化の話？スイカは何時の季語だっけ？世界遺産に登録されている清水寺の山号は……
　
　
　「 あ、Aちゃん。 」
　「 どうもー。 」
　「 どうしたの？授業は？ 」
　「 体調不良なんで保健室に行こうと思ってたんですけど、立ち眩みが凄くて休憩してました。 」
　
　
　少し離れた所でしゃがんでいると、関田がショッピとの密会を終えてやって来た。あんただってサボってんじゃん。


　「 あら、大丈夫？保健室まで一緒に行こうか。 」
　「 大丈夫でーす。ひとりで歩けるので。それより、先生。 」


　ぬくぬくと立ち上がる。関田、アイライン長。それは何ファッションなの？変だね。


　「 富岡製糸場の設立に関わった人物と言えば誰ですか？ 」
　「 渋沢栄一、とか？ 」
　「 渋沢栄一って女遊びが凄かったらしいですね。 」
　「 大河ドラマ、結構面白かったよ。 」


　絶妙にはぐらかされた。賢い女は面倒臭い。


　「 妾の子、か。 」


　関田のまだ小さいお腹に毒を吐くのは、心が痛む？
　
　
　▶

¦→←¦

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す