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現実味がない。
「 鈴名、時間無くなるから早く行こう。 」
「 本当にいいの?写真撮らなくて。 」
「 良いよ。遊ぼうよ。もう熊本から出ちゃうんだし。 」
「 後悔するよー? 」
「 しないよ。後悔なんてしない。 」
バス移動がお決まりの修学旅行。私達のバスのバスガイドさんは、30代前半のお兄さん。ニックネームはトントンさん。トントンさんは熊本出身じゃないのが明白だったが、沢山の知識で熊本の事を案内してくれた。おまけに、顔もスタイルも完璧。ちょっと渋い感じのダンディなお兄さんで、私も鈴名も他の女の子も皆、カッコイイと思っているだろう。
本日、このバスとはグリーンランドで終わりだ。つまり、トントンさんともお別れなのだ。
「 楽しかったね、バス。 」
「 私、ほぼ寝てたから話聞いてないんだよね。 」
あんなにカッコイイと言ってた癖に、トントンさんの話は聞いてなかったのか。ガッカリした。鈴名とは温度差で何時も悩む。
「 熊本、良い所だったね。 」
「 そう?私は沖縄が良かったけど。 」
「 沖縄もきっと楽しいけど、熊本も楽しかったよ。将来住んでみたいかも。 」
「 えー、私は絶対に嫌。暮らすなら東京が良い。それでカッコイイ彼氏と結婚して、幸せになるの。やっぱり、結婚式はウエディングドレスかなー。Aも来てよね。 」
その言葉に適当に頷いたのを思い出した。あれから数年。律儀に招待状を飛ばしてくれた鈴名。そしてまた、律儀にウエディングドレスを着ている。高校時代の事、案外覚えてるんだな。それか、高校時代から思想が変わっていないのか。鈴名の場合、後者かも。
カメラを他の参列者の真似をして向けてみたが、こんな写真保存するだけ無駄だと思い、歓声の中に隠れた。私もあの頃から変わっていない。何も、変わっていない。
「 さて、続いては新婦・鈴名さんから新郎・遊太( ユウタ )さんへのお手紙のお時間です。 」
司会者を務めているのは、鈴名の大学の同期らしい。さっき、近くで参列者が話してた。へえ。流石、" 1軍女子 "。
手紙を封筒から出した鈴名は恥ずかしそうに微笑み、新郎・トントンさんを見た。背景を彩るのは、私が撮ったグリーンランド前のふたり。
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紗枝(プロフ) - ちびさん» こんばんわ。温かいコメント有難う御座います。本当に嬉しいです☺ " はくしき "とても思い入れのある作品です。そんな風に言って下さって、光栄に思います。これからも度々、覗きに来てくれると嬉しいです💐 (5月30日 3時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
ちび - この短編集から貴方様の事を知りました。とても文が好きで文字の使い方が好きです。とくに「はくしき」が何か胸にもやっとくるような不思議な気持ちになりましたとても好きです😢✨これからも応援してます。 (5月29日 21時) (レス) id: b1c4d4a663 (このIDを非表示/違反報告)
紗枝(プロフ) - 大神さん» こんばんわ。通知に紛れてしまい、反応が遅くなってしまいました。申し訳御座いません。お優しい言葉、言葉にならないくらい嬉しいです😊 これからも見守って下さると嬉しいです🥰🥰 (5月21日 22時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
大神(プロフ) - zmさんの小説を読んでから全ての作品を読ませて頂きました。どの作品も心に刺さりましたが、この短編集が特に好きです。こんなに自分好みの小説を書かれる方に初めて出会い、言葉にならないくらい好きです。これから応援しております。 (5月20日 12時) (レス) @page37 id: 48f5acd833 (このIDを非表示/違反報告)
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