１６ ページ17
.
辿り着いたそこは
あまりにも神聖な 色と光を讃えた世界で……
潤「……何だよ、ここ…」
洞床には一面、大小様々な大きさの窪みが広がり
そのどれもが……透き通る、黄金の水面を湛えていた
．
水面から溢れる光は
天に並んだ鍾乳石から落ちてくる水滴により、それぞれが時折柔らかく揺れ
幾重にも輝く波の模様を
窟の壁へと描き出す
鍾乳石の幾つかは
太くしっかりと地面まで伸び
柱と化してこの洞を支え
柱の周りを飛び交う羽虫も
漂い浮かぶ海月達も
その庇護を
喜ぶように光を跳ねて……
.
その景色に圧倒され……息を呑んだ四人だったが
やがてゆっくりと進み始める
すると、先頭の櫻井が何かに気付き
窪みの一つを覗き込んだ
．
翔「…これ …… 底の方に何かいるぞ」
それを聞き
後方の相葉も近くの湖面を見下ろした
雅「本当だ、こっちのにも」
．
それぞれが見つめる黄金の水底
目を凝らすと、見えてきたのは
ひしめき泳ぐ「何か」の姿……
一つ一つは限り無く透明で
寄り集まって漸く生まれる……微かな影のおかげで
その存在を確認する事が出来た
．
潤「…多分これって… コイツらじゃない？」
．
松本が、浮かぶ海月を指差して言う
確かに
水底に潜む影達は
あの……海月状の「何か」と
同じ生物にも見えた
雅「ねぇ見て、窪みの内側……
ヘリのとこにもびっしり何か生えてるよ」
相葉の声で、更に身をかがめ覗き込むと
キラキラと輝く湖面の縁は
黄金の鱗で覆われていた
その鱗はどうやら卵か
幾つかの個体は破れ
そこには羽虫が留まっていた
孵ったばかりと思われるそれは、黄緑に透ける身体を持ち
柔らかそうな羽を震わせ、瞬きの最中 旅立っていく
相葉達がそれを見つめる一方で
二宮は鍾乳石の柱に近づき
ある物に目を奪われていた
点々と柱にとまり、羽を休める羽虫達
そこに紛れ見えたのは
微動だにしない青い虫
気になった二宮は指先を伸ばしかけたが
触れる間際で思い止まる
よく見ると
鍾乳石の亀裂から、あの青い液体が僅かながらに染み出して
動かぬ虫を湿らせていた
和「……なんなんだっつの」
足元を見ると
真っ青の虫が疎らに落ちていて
見渡すと……どの鍾乳石の根元にも
うっすらと積もるそれらが見えた
そこへ聞こえた
「進むぞ」という櫻井の号令
その場を離れる二宮の目に
青の個体に跨がり蠢く
黄金の虫が……最後に映った
．
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←１５
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 394人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ほうれん草(プロフ) - 初めまして！どうしても気持ちを伝えたくて会員登録しました！現在大学生なのですが、小学校の頃から何度も読み返して楽しませていただいています…！TEMPESTは間違いなく1番好きなケータイ小説です。これからも楽しみにしています！更新ありがとうございます！ (2020年11月23日 3時) (
レス) id: f0434b5d68 (このIDを非表示/違反報告)
ペコちゃん - 毎回ハラハラしながら見させてもらってます。リーダーのその後が気になって仕方がありませんっ！更新首を長〜くして待ってます！ (2020年11月12日 20時) (レス) id: 726f26b2c6 (このIDを非表示/違反報告)
めいそん(プロフ) - TEMPESTで見させてもらった景色が何年経っても忘れられず、ふとまた覗きに来てみたら更新されていてびっくりしました！一気に読み返してしまいました。またこの世界の続きが見られると思うととても嬉しいです。更新ありがとうございます！ (2020年9月13日 20時) (レス) id: 3acd423d16 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - サハラさんの更新通知がとても嬉しいです！サハラさんが描く5人が大好きです。是非結末まで見届けたいと思います。 (2020年9月6日 14時) (レス) id: d6343d5c60 (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - サハラさん、更新ありがとうございます。美しい風景描写にうっとりします。本当に大好きです。余韻に浸りながら次の更新をゆっくり待ってます。 (2020年9月1日 18時) (レス) id: 481bc4ee81 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サハラ
作成日時：2018年4月13日 12時
