【爆豪勝己】仮面王女の鎖

36. 聞こえた ページ38

【車の中で】









もちろん姿は見えなかった。



だけど…確かに声は聞こえた。







その驚きが上回って

私に飛んできた火の玉に対する恐怖なんて
あっという間に消えていた。





それに…犯人はきっとレガト人だ。


今日、世界中の人々が集まることを利用して
自分たちがベルガラント人に何をされてきたか


それを伝えたかったんだと思う。





だから…




緊急で私の護衛についた隣に座るライズに言う



「…あの人を、殺さないで


無罪とは言わない…だけど『ステラ様』」



「あの男に同情する必要はありません。


陛下がお許しにならないでしょう。
貴女は…何も気になさらないで下さい」






…やっぱりそうだよね。

どれだけ周りに崇められても、所詮は偽物。
私には何も出来っこ無いのだ。




「…貴女に火が向かっている時
貴女は何かに反応したように見えました。

一体何があったのです？」





ライズは視野が広い。

私の些細な反応ですら、見逃さないのだ。

幸いにも彼の声はライズに届いていなかった。



「…きっと、気のせいよ」




私は彼から顔を背けた。

ごめんなさい、あなたは悪くないのに。


だけど今ここで本当のことを言えば


貴方はきっと彼を捕まえて、私の秘密を
少しでも知る人間として排除するだろうから。




ガラスに映る私の顔は

どこか不安そうな表情をしていた。




早く…秘密を知られる前に
彼をこの国から逃さなければ。



私の今の心配は、そればかりだった。

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