【爆豪勝己】仮面王女の鎖

31. 名を呼ぶ2人 ページ33

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「ライズ」




斜め後ろを歩く我が国王

“アーサー＝ベルガート＝フォース”。




フォース15世と呼ばれるこの王の力は
俺でも敵わないほどに強い。

武力も、権力も、どちらもだ。




「はい」




「明日は嫌な予感がする。

ステラの周りの警備を強化しておけ
あいつがあの場で殺されるのは都合が悪い」




「かしこまりました。再度確認しておきます」




王室まで送り届けた後、食堂に戻る。



そこには、食事に手をつける事もなく
ただボーッと座っている彼女がいた。




「…召し上がらないのですか？」


「せっかく作って頂いたのに…喉を通らないの


ごめんなさい」


彼女のその言葉を聞いて
側で待機する他の者に食事を下げさせる。



それでも彼女が立ち上がる気配はない。


「貴方は…前から聞いていたの？

私の結婚の話」



「いいえ、先ほど初めて知りました」




相当なショックを受けているだろう。

俺自身もかなりの衝撃を受けた。



何と声をかければいいのか分からない。

そんな俺を見かねてか


「…きっと素敵な方に違いないでしょうね」




その笑顔は



諦めからか

絶望からか

それとも俺に殺される恐怖からか



もしかすればその全てかもしれない。




「…そうですね。



今日はもうお部屋に戻ってお休み下さい
明日は忙しいですよ」




「ええ、そうするわ」




穏やかに笑うその顔を見て、胸が痛む。




俺はこの10年間


彼女が泣いているのを見たことがない。




人はおそらく、
限界を超えるほどの絶望に直面すると


涙は出なくなってしまうのだろう。




そんな事を思いながら、部屋まで送り届ける。


彼女が部屋に入ったので扉を閉めようとした時



「ライズ」



そう呼ばれた。



「どうなさいましたか？」



すると彼女は、俺の手を優しく握った。



「今日まで…私を育ててくれてありがとう。


これからもたくさん迷惑をかけてしまうけど…
きっとこの国にふさわしい王女になるから

これからもよろしくね。お休みなさい」




そうして扉を彼女は閉めた。






同じように名前を呼ぶこの2人の
どちらが俺にふさわしい君主なのか



答えは明白だった。





何としてでも彼女の未来を守らなければ。

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