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19. 従う理由 ページ21








外の空気は一層冷たく感じた。


熱を帯びた酒の空間に入っていたからだろうか

一瞬でベルガラールに帰ってきたような
そんな気さえする。







ライズは私を乗せた後、自分も助手席に座り
車は動き始める。




「…いかがでしたか?ベルガラールの街は」



フロントミラーに映る彼と目が合う。





「…私は何も知らなかったわ。


たくさんの本を読んで、映像を見て…この国の
地理や文化も全て理解していたと思っていたの


けれど、『他』は何も分かっていなかった
それに今日気づく事が出来たの。



貴方があの店に私を連れて行ってくれたのは、
外の世界の人々を見せたかったからでしょう?


私が望んでいた事を、貴方は分かっていて
最後に外に出してくれた。


ありがとう、ライズ。
今日の事はきっと忘れないわ」






嘘もつかないし、誰の気も乱さない。

その条件を満たした言葉を述べただけだった。




「そうですか。喜んで頂けて良かったです。



城に到着しましたので、お降り下さい」



そう、淡々としたその返事を貰うために。





別に今言ったことが全てではない。

だけど運転手がいる以上、言えなかった。







ライズとだだ広い廊下を2人で歩く。


言うなら今しかない。




「…ライズ」


「はい」


「貴方は、それで良いの?」



爆豪さんに言われた言葉だった。




前を歩くライズは立ち止まり、
私の方を振り返った。


「突然ごめんなさい。

あの時には運転手の方も居たから
言えなかった事があるの。






貴方はここでベルガート家を守る事が
使命であり運命であると言ったわ。



貴方自身にやりたい事はないの?

自由になりたいとは…思わないの??




私は…今日思ったわ。



私は…」




何て狭い世界で生きてきたのだろう


縛られて生きてきたのだろう


私はちっとも幸せなんかじゃない。
ただの自由を奪われたドレイと同じだ




その言葉は言えなかった。








言ってしまえば、殺されてしまう気がした。




だってそれは、私が



『この国から逃げたい』








そう言っている事と等しいから。







ライズは私を真顔で見つめたまま

表情は終始変わらなかった。




そして静まった薄暗い廊下で、低い声で答えた



「…今お答えできる事は1つです。


私がこの使命に従う理由があるとするのならば





それは…









貴女に幸せになって欲しい


ただそれだけです」






え…?

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Mona(プロフ) - アヤさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます( ; ; )これからものろのろ更新ですが気長に待って頂けると嬉しいです!これからもよろしくお願いします(^^) (2019年12月8日 0時) (レス) id: bb0d022ee1 (このIDを非表示/違反報告)
アヤ(プロフ) - 早く!続きが読みたくて、うずうずしています。かっちゃんとステラの葛藤が待ち遠しいです。いつまでも次の話待ってます(*´ ˘ `*) (2019年12月7日 10時) (レス) id: ffe771d046 (このIDを非表示/違反報告)
Mona(プロフ) - あすまさん» ありがとうございます!これからも亀更新ですが頑張りますね( ; ; )よろしければ他の作品も覗いてやってください(^^) (2019年11月27日 22時) (レス) id: bb0d022ee1 (このIDを非表示/違反報告)
あすま(プロフ) - 最後までいっきに読んでしまいました!とっても面白いです!更新楽しみにしています!応援しています頑張ってください! (2019年11月25日 1時) (レス) id: 0aabcfb8f7 (このIDを非表示/違反報告)
Mona(プロフ) - siroさん» ありがとうございます!これから面白くしていくつもりですので最後まで見届けて頂ければ嬉しいです(^^) (2019年10月18日 22時) (レス) id: bb0d022ee1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mona | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=academia1st  
作成日時:2019年9月27日 20時

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