【五条悟】ブラックスマイル

40. また明日 ページ42

【貴女side】



五『…本当にズルいよね、いつも』



ため息なのか、笑ってるのか
電話越しの声では分かりづらい。



『…ズルい事したつもりは無いんだけど』

五『今度どこに行こうか』

『は？』

五『デートの話』



彼はいつも話が飛ぶ。
わざとなのかどうかは分からないけれど。


『…申し訳ないけど、それはやめとく』

五『僕のことそんなに嫌い？』

『眠いの。お休みなさい』




好きも嫌いも無い。だけど今は



『……


あなたを嫌いだと思った事は1度も無いよ』


彼に少しだけ感謝している。




五『…ハハ、好きまではまだまだ遠いなぁ』

『…そうね』



私にとっての“かつて”の友人の中に
確かにこの人は含まれていた。






だけど今は、

もう私の中には夏油くんと硝子しか居ない。




彼は、私の…大切な人たちを殺した。

そして家柄だけで物を言ってしまえるのなら
両親の仇、だ。




今更そんな事を彼に言うつもりは全く無い。
別段恨んでいるわけでも無い。

だけど私は無意識の中で
そのフィルターをかけながら彼を見ている。


だからいくら彼に言葉をかけられても
何も感じなかったし

別に私の言葉で彼が傷付いたって
心底どうでもよかった…ハズなのに



少しだけ変わっているようだ。



今だってそう。


彼の言葉に共鳴するように
私は私の考えを伝えた。

こんな事、ずっと無かったのに。
私の中で何かが変わろうとしている。



彼自身は、私が少しずつ話すようになったのは
恵のおかげだと思っていそうだけれど

私をめちゃくちゃに巻き込んでくれているのは
他でも無いあなた自身であると



どうか調子に乗られては困るので
気づかないで欲しい。




『…また、明日ね』

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