【五条悟】ブラックスマイル

18. 鏡に嘘は映らない ページ20

【貴女side】



あの一瞬、私はどんな顔をしていただろうか。


『君はずっと怒ってるし、ずっと悲しんでる』

『自分の事嫌いなんでしょ？』


…自分を見透かされてる気分。



この10年、私は羨望の眼差しの対象だった。



『どんな時も美しくて笑顔で優しい』
『私も生まれ変わったら貴女になりたい』


そう言われるのが、『蘭世』という女だった。



そんな嘘で塗り固めた姿の居心地が楽で
甘えていたのかもしれない。

私だって、そんな人間に憧れていたから。




分かっているの

私は…きっとどこかで怒ってる。
もしかすると悲しかったり泣いているのかも。


だけど怒ったって、泣き叫んだって

結局は自分が傷ついて終わるだけだから
私は早々に表に出すのを辞めた。

笑っていれば、嫌な事も少しは早く終わる。
泣きそうになっても涙は出てこなくなる。


…両親の殺害が五条家の指示だと知ったのは
ホステスになってからだった。

ただの呪詛師が両親を殺したと思っていた。
事実、その後も何回か襲われた事がある。

小学校に乗り込んできてまで
そういう奴らに襲われた事もある。

そのせいで死んだ人だっている。

だから、自分の周りの人たちは
みんな不幸になるのだと思っていたし

『呪いの子』そう言われ続けて生きてきた。


そんな時に
どこかで私の情報を仕入れた夜蛾さんのお陰で
高専に逃げ道を作ってもらえた。


呪術師になって、みんなと一緒に過ごして…

……多分、楽しかったんだと思う。


だからこそ…私は高専から去った。
私はここにいてはいけないような気がした。

私が幸せを感じる事などあってはならない。




そして関係の浅い人間たちと一緒にいた方が、
万が一何かあった時でも少しは気が楽になる。


だから私は、夜の世界に足を踏み入れた。

酷い話だと思う。

自分が死ねば全て解決する話なのに、ね。
首を切る事ができないなんて笑える。

人や物を好きにも嫌いにもなれない理由は
もう分かってる。


『私は…私が1番大っ嫌い』



鏡の中心、私の顔の中心に指を置くと
そこから亀裂がピシピシと広がっていく。


蜘蛛の巣状になり果てたその鏡は
私をより一層、醜く見せた。

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