【五条悟】ブラックスマイル

16. 気に障る ページ18

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「どーこ行ってたの」


帰ってくると、部屋の前の壁にもたれながら
彼はこちらを向いた。


『お店。急に辞めたのに謝ってなかったから』

「そういう所は律儀だよねぇ」

『人並みの常識とか礼儀はあるよ、一応』

「確かに」

『それを聞くために待ってたの？』

「うん、1分前くらいからね。
何となく君が帰ってくる予感がしたから」

『勘がいいね。お休みなさい』


ドアを閉めようとすると、脚を挟まれた。


目の前で彼は笑って立っている。



『まだ何か用？』

「今度僕とデート行かない？」

『やめとくね』


そう答えても足を退ける気配は無い。

鬱陶しいなとか思ったりしないこともない


「僕の事ウザいって思ってるよね？」

『そんな事ないよ』

「じゃあどうすればウザがってくれるかなー」


何言ってんのこの人。


『嫌われたいの？私から』

「嫌われたくはないけど
色んな顔見たいなーと思って


まぁ高専時代からだけど」

『変な人』

「あと怒ってる顔も見たいかな」

『私、怒った事無いの』

「それも嘘だね」



それ『も』？

引っかかるような言い方をいつも言って来る。



「君はずっと怒ってるし悲しんでる
気付いてないだけだよ

なんなら今もウザがってる」


『だとしても、どうでも良いよ
今までそれで生きて来たんだから』


「『何でも良い』

『どうでも良い』

『興味ない』


この３つのワードは今から使用禁止ね」


『…いきなり何？』

「深く考えずにゲームだと思ってよ

3回ミスったら僕ともれなくデート。

悪くないだろ？」


『どうでも良いかな』

「はい、１回。意外とちょろいね〜」


心の中で舌打ちした。だけどそれと同時に、


私って本当に自分の事になると
そういう言葉しか出てこないんだなと思った。

楽に早く死ぬ事しか考えていないからだろう。


心底自分も他人もどうでも良い。


『あなたは私に何を求めてるの？』

「自分に正直になって欲しい。
泣いたり笑ったり怒ったり。思いのままにね

君、自分の事嫌いなんでしょ？」


金槌でこめかみを打たれたような響きが走る。


「そう、そんな顔とかね」


気付けば、無表情になっていた。


『思ってた以上に貴方って性格悪いみたい』

「こういう男嫌い？」

『心底どうでも良い』

「はい、２回〜」


私をからかって何が面白いのか。

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