貴方のために出来ること〜もう一つの未来へ〜 part.7【名探偵コナン】

316, ページ44

人間の姿なら轢かれた同族を抱えて病院へ走ることも可能だが、今の私は小さい猫。どう考えても手遅れになるし、引き摺って行くわけにもいかない。


『みゃ！みゃ！(早く！早く！)』


私の側に横たわってる子が見えたのか、気を引き締めた表情へ変わる。走りながら羽織っていた上着を脱いだ秀一は、たどり着いてすぐ同族を包み、両手で抱え上げた。その手には配慮が伺える。私が一っ飛びで秀一の肩に乗っかったのを確認すれば「落ちるなよ」と、また来た方向へと逆走。


途中で置いてけぼりにしていた明美さんを回収しつつ車へ戻る。上着に包んだ猫を明美さんへ預け、秀一は車を発進させた。


明美さんが悲鳴を上げるほどの素晴らしい運転技術で、そのまま動物病院へ疾走。私？私は目一杯秀一にしがみついてた。離したら最後、車内に怪我猫が増えることになるから。






──こうして無事に病院へ辿り着いた後、その猫は緊急手術することに。結果は成功。あと少し遅かったら、お亡くなりになってたそうだ。


包帯を巻かれ、麻酔でぐっすり眠っている猫。さっきは血みどろでわかんなかったけど、縞々猫だった。ただこの猫は首輪が無かったから野良だろうと思う。だから今回の病院費用は秀一が出すことに……。でもあんな場面見ちゃったら放っておけないじゃん？私だって痛いのイヤだもん。


(私の我が儘だから、後で返しておかなきゃ)


……受け取ってくれないのではないか？って思うのは、私だけかな？秀一は私を甘やかしてくるからなー……。こういうことなんて滅多にないし……。


有り得そうな予感を頭の隅に追いやって、もう一つ考える。それはもちろん轢き逃げ犯のことだ。


(あんにゃろー……。猫に喧嘩売ったことを後悔させてやるからな。ふふふふ……)


正義感ってものは持ってないけど、腹が立てば徹底的に交戦してやるのが私だ。え？容赦してやれ？私猫だからー。ようしゃって言葉、難しくてわかんにゃーい。ﾆｬﾊﾊﾊﾊ。


犯人にとっては、これ以上ないくらいイヤなものに目を付けられたなと自分で思う。でもさっきの行いは、お天道さんが許しても私が許さん。潔くくたばるといい。


丁度良いストレス発散相手が出来たからか、心の中が真っ黒になる。見た目は白なのに、中身は黒。こういうのを腹黒という。これは秀一に悟られたら怖い思いするな。これだけはペロリしちゃダメだ……(ｶﾞｸﾌﾞﾙ


.

317,→←315,

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す