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ar side .
「…俺が別れるって言ったら別れんの?…意味分かんない…そこに伊野ちゃんの意思はないわけ?」
「はあ…?…だって、俺といるの嫌になったんでしょ?仕方ないじゃん、そんなの…てか今更…」
"仕方ない"…?
伊野ちゃんは、その一言で済ませられるの…?
…俺にとって、伊野ちゃんと過ごす時間は何よりも大切で、楽しくて、幸せで……だから、
「…俺だって…」
「…?大ちゃん…?」
言ったら駄目だ。
頭では分かっているのに、もう止められなかった。
「っ…あの時っ、"別れたくない"って言ってくれたら俺だって…!」
「…なにそれ」
思わず飛び出た本音。
後悔したって今更取り消せない。
こんなことが、言いたかったわけじゃないのに…
「…じゃあ、全部俺が悪いんだ?」
「ぁ…違っ、」
「大ちゃんっていつもそうだよね、
…ほんと、いっつもそう…」
段々と弱々しく、掠れる声。
華奢な肩が小さく震えていることに気が付いた。
「っ…大ちゃんなんかっ…」
…"嫌い"、とでも言うんだろうか。
嫌われても仕方のないことをしてるって自覚はあるのに、いざ言葉にされてしまったら傷つく自信しかない。
伊野ちゃんが今から吐き出す言葉を、聞こえないようにいっそキスで塞ぎたい、なんて馬鹿げてる。
…ああ、やっぱり俺はどこまでも…
「…大ちゃんのことなんか…
……嫌いに、なれたら…よかったのにっ…」
伊野ちゃんの目から、涙が一筋。
……なんで…
「け、い…?」
「っ…!…いまさら、名前で呼ぶなよ……!バカッ…」
「っ待って、!慧っ…!」
扉の外へ出て行こうとする伊野ちゃんの手首を掴み、それを阻止する。
「やだっ…!離せっ…」
「嫌だっ…!!絶っ対離さないっ…!」
もう、あの時みたいな思いはしたくない。
抵抗する伊野ちゃんの両肩を掴んでこちらを向かせ、正面から思いっきり抱きしめた。
…もう俺から逃げないで、君の気持ちを聞かせて…
「っ…!…だい、ちゃ…」
「…ごめん…俺、慧をずっと苦しませてた」
「……ばか……ばかっ、大ちゃんのばかぁっ…!」
「…うん、馬鹿で最低な彼氏でごめんね。
…慧には、俺よりもっと相応しい人がいるって、分かってるんだけど…」
それでも、好きな気持ちは抑えられなかった。
もし叶うことなら、伊野ちゃんの隣にいるのは俺でありたい。
俺の隣でずっと笑っていて欲しい。
こんなの我儘だって分かってる。伊野ちゃんがそれを望んでいるのか確かじゃない。だけど……
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にゃるる - 返信ありがとうございます泣泣 新垢待ってますっ!!!またむにこめさんのお話が読める日を楽しみにしております(≧∀≦) (1月13日 23時) (レス) id: 9df1e97525 (このIDを非表示/違反報告)
むにこめ(プロフ) - にゃるるさん» お話気に入っていただいて嬉しいです、ありがとうございます…!アカウント突然消してしまい申し訳ありません。移行先はまだ作っていないので、出来次第お知らせさせていただきますね。ar王子とinも少し加筆修正して載せる予定ですので、もう暫くお待ちくださいm(_ _)m (1月9日 17時) (レス) id: 467faef54a (このIDを非表示/違反報告)
にゃるる - むにこめさんのarin作品大好きです泣 話は変わって申し訳ないのですがTwitterのアカウントが消えてしまったみたいなのですが、移行先のアカウントを教えていただくことは可能ですか?泣 Twitterの方で読んでいた王子arとinのお話もまた読みたくて... (1月3日 2時) (レス) id: 9985c4f555 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むにこめ | 作成日時:2023年3月19日 15時