ユーカリ ページ30
in side .
「じゃあ、もう別れる?」
冗談だと思いたかった。
売り言葉に買い言葉の喧嘩中、不意に告げられた冷たい言葉に、頭の中が真っ白になった。
俯く大ちゃんの表情が見えなくて、不安で、苦しくて…
「…そうだね」
ただ、大ちゃんに嫌われるのが怖かった。
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あれから5年____
「伊野尾と大ちゃんって別れたんだよな?」
「…とっくの昔にね」
「…じゃあ、それなに?」
薮の視線の先には、俺の肩に頭を乗せて体重を預けてくる元恋人の姿。
「…そんなの、俺が聞きてぇよ…」
今日は久々のBEST会。
仕事終わりの夜、個室で飲んでいたら皆テンションが上がっちゃって酒の勢いもすごくて…そう、特に大ちゃん。
顔を真っ赤にして、眠ってしまうくらい酔うのは珍しいなと思いつつ、たまたま隣にいた俺は仕方なく肩を貸している。
…そう、それだけ。
この行為に深い意味なんてない。
大ちゃんも、俺も。
俺らの関係はもう終わったんだ。もう5年も前に…。
「伊野尾ってまだ大ちゃんのこと好きなんだろ?」
「!!?っちょ…!ばか薮っ、」
隣にその本人がいるというのに、少し酔っているのか微笑みながらそんなことを聞いてくる薮に、飲んでいたお酒を吹き出しそうになった。
「だいじょーぶ、寝てて聞こえないよ」
隣の無防備な寝顔をチラリと覗いて、深いため息をついた。
「…そおだよ」
「やっぱりなぁ…大ちゃんには伝えないの?その気持ち」
「言えるわけないだろ……もう5年だよ?今更好きとか言ったって、どうにかなるもんでもないし…」
5年経った今でこそ普通に話せているけれど、心の奥は彼に対する想いでいっぱいだ。でも1度フラれてるし、今更自分から告白する勇気なんて全くない。
…寧ろ、これ以上大ちゃんに嫌われたくない
同じメンバーとして、ただ近くにいられるだけでいいんだよ
薮は、本当にいいの?と、納得がいってないような顔をして話を続ける。
「…伊野尾は知らないと思うけど、
大ちゃん、酔ったら伊野尾の話ばっかすんだよ」
「…ええ?…嘘だぁ、」
…そんなわけ、ない
なんで大ちゃんが俺の話なんてするんだよ。期待なんて少しもしたくないのに、加速してゆく鼓動は嘘をつけないみたいで。
…俺の何の話してるの、なんて怖くて聞けなかった。
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にゃるる - 返信ありがとうございます泣泣 新垢待ってますっ!!!またむにこめさんのお話が読める日を楽しみにしております(≧∀≦) (1月13日 23時) (レス) id: 9df1e97525 (このIDを非表示/違反報告)
むにこめ(プロフ) - にゃるるさん» お話気に入っていただいて嬉しいです、ありがとうございます…!アカウント突然消してしまい申し訳ありません。移行先はまだ作っていないので、出来次第お知らせさせていただきますね。ar王子とinも少し加筆修正して載せる予定ですので、もう暫くお待ちくださいm(_ _)m (1月9日 17時) (レス) id: 467faef54a (このIDを非表示/違反報告)
にゃるる - むにこめさんのarin作品大好きです泣 話は変わって申し訳ないのですがTwitterのアカウントが消えてしまったみたいなのですが、移行先のアカウントを教えていただくことは可能ですか?泣 Twitterの方で読んでいた王子arとinのお話もまた読みたくて... (1月3日 2時) (レス) id: 9985c4f555 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むにこめ | 作成日時:2023年3月19日 15時