Bouquet. 2 ( ar×in shortstory )

＊ ページ22

ar side .



___最初、ドラマの話を聞いた時、正直ラッキーだと思った。


現実では触れたくても触れられない伊野ちゃんに、ドラマの中では、演技としてなら触れても許されるのだと。


伊野ちゃんは、このドラマに対してあんまりノリ気じゃなかった。

そりゃそうだ、メンバーの俺とのラブシーンなんて、気持ち悪いに決まってる。


…ごめんね

なんとしてでも君に触れたいと思ってしまう、
罪深い俺を許してほしい。


撮影当日、案の定元気がない伊野ちゃんに、普段通り声を掛けた。…大丈夫、下心なんてない、って、自分に言い聞かせるみたいに。

それなのに……


いざ、真っ赤な顔して勃 ち上がったモノを隠そうとする伊野ちゃんを見て、今まで大事に閉まっておいた想いが溢れ出てくるような感覚がした。


おんぶをしている間、背中に当たる君のそれが熱くて、それだけでも結構きつかったのに

外に出ようとする俺を引き止めて、潤んだ瞳をして"行かないで" なんて…


一度歯止めが効かなくなったら、もう二度と戻れないって、頭では分かっているのに


…伊野ちゃんが悪いんだよ

そんなに、求めるように俺を見てくるから


伊野ちゃんの声を抑えるため…なんて建前で、したいと思ったからキスをした。余裕のない、乱暴なキスをした自分の気持ちを誤魔化すように、伊野ちゃんの頭を撫でた。


｢…伊野ちゃん、頑張ったね｣

｢だいちゃ……なんで…？｣


…言ってもいいのかな

もう一生元には戻れない、あの言葉を ____


｢…伊野ちゃん…俺……｣

｢ん…？｣


不安そうなその顔を見たら、怖くなった。

…だから逃げた。


目の前の君を抱き締めるだけで、今の俺は精一杯。


｢…大ちゃん…？｣

｢…ごめん、なんでもない｣



…伊野ちゃん相手だと、こうも臆病になってしまう

意気地無しでかっこ悪い俺


俺の背中に腕を回してくれた伊野ちゃんの想いに、その時は気づけなかった。








アンズの花言葉 . . . " 臆病な恋 "

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